母国の震災から社会的課題がみえてくる

 

このたび熊本・九州地震の被害に遭われた方々、ご家族やご友人などが被災地にいらっしゃる方々へお見舞いもうしあげます。

 

フィンランドでも国営放送で報道されていたけれど、日本の「防災速報」アプリとツィッターで即刻このニュースを聞いた。海外に住んでいても今の時代リアルタイムに情報が来るもんだから便利なようでやはり情報過多すぎて東日本大震災の時と同じように、情報が錯綜しているようだ。

その東日本大震災のときは東京にいたが、今回はフィンランドに住んでいる。そして子どもがいるのといないのでは、こういう災害時の対応や考えることが違ってくることが今回よくわかった。

 

災害時だけでも液体ミルクを

というのは、5年前のときにフィンランド在住の日本人の方々がフィンランドの乳幼児用の液体ミルクを支援したと聞いた。当時はまったくピンとこなかったが、子を持つとよ〜くわかる。絶対にこれは便利だ。

日本のミルクは粉ミルク。お湯で溶かして飲ませるようだが、災害時にはとんでもなくこれは不便だ。日本で育児をしたことがないけれど、想像しただけでもへたれそうだ。飲料水も手に入らず、お湯を沸かす道具もない避難所などでどうやって乳飲み子を育てるのだ?

いろいろ調べてみると、粉ミルクの利益率が高いとか、母乳代用品の販売流通に関する国際基準”WHOコード“なるものがあったりして、障壁が高い。

しかし災害国の日本の育児を考えると、災害時の救援物資として導入した方が良いのではないだろうか。備蓄物資の中にどんなミルクが保管されているのかわからないが、伝わってくる情報では液体ミルクはなさそうだ。

ミルクが不足したから避難中に子どもが亡くなった、ということはないだろうけれど、避難時になるべく母子のストレスを減らすために、そして少しでも普段の生活に近づけるためには、これだけでも大きな変化だと思う。

 

社会的課題として捉える

企業の社会的責任(CSR)の視点からいえば、これは乳業メーカーの社会的課題のひとつと捉えられるだろう。ミルクの利益率と災害時のミルク不足を天秤にかければわかるだろう。もう利益至上主義といってはいられない。普段の販売流通まで一気に変えることは現実的ではないので、せめて災害時の備蓄食糧として導入されないだろうか。利益率やWHOコードの他に、もしかしたら衛生法上の問題もあるかもしれない(液体ミルクの販売国と日本の気候を比べると、日本の夏に常温保存は禁止されるかもしれない)。

しかし東日本大震災からの教訓がこういうところに活かされなければ、日本の育児事情はもちろん、災害国としての施策、持続可能な国家にはほど遠いだろう。

「ミルクの利益率が高い」と書かれた著者の企業は、「共通価値の創造= “Creating Shared Value” =CSV」で先進的な取り組みをしている会社である。日本独自の課題かもしれないが、いやだからこそ日本の社会的課題として捉えるべきだろう。

 

災害から社会的課題がみえてくるのは、なにも粉ミルクだけではない。他にもっと重要なことや地域的な課題も散在するであろう。阪神、東北、そして九州。東北の復興もままならないのに次から次へと起こる災害。地震国、災害国としての社会的課題をどう捉えるのか。外から母国をみているとこの課題への解決策がみえてこないので、非常に心配になる。