「地域レベルでのカーボンニュートラルの達成に向けたサーキュラーエコノミーの取り組み」フィンランド・トゥルク市の事例

ヘッダー写真は、Kakolanmäki地域。「>」の形とその周りの建物が旧収容所。その右下は新築の住宅街。廃水処理プラントは旧収容所の左側に位置する(写真外) 出展元:Pohjola Rakennus Oy (サイトは記事下)

 

2019年12月2日からCOP25がマドリードで開催されました。持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会「ICLEI」(イクレイ)のセッションにて、フィンランドの古都トゥルク市は、地域のサーキュラーエコノミー の実現に向けた取り組みを紹介しました。今回はその内容をお伝えします。

トゥルク市は、市が800周年を迎える2029年までにカーボン・ニュートラルを、2040年までにはゼロエミッションとゼロウェストを目指しています。
その実践として、具体的な3つの取り組みを紹介します。

1, バリューチェーン全体で資源を循環させる

製品およびインフラの設計における材料の再循環や効率性の構築、または資源のプールやカスケードに基づくビジネスモデルは、エネルギーや二酸化炭素排出量の削減だけではなく新しい生産ニーズをも削減するサーキュラーエコノミー そのものです。

トゥルクの実践その1:

トゥルク市は地域における民間セクターのサーキュラーエコノミー ・イニシアチブを支援してきました。 その一例が、隣接するライシオ市のSmart Chemistry Park(SCP)です。 SCPは、化学業界14社により相乗効果の特定オンサイトプラットフォームを提供する「産業共生プロジェクト」です。 企業は共通施設の費用を分担し、化学物質の安全性と特許工学に関する専門知識を利用できます。

2, 新しいクリーンなエネルギー源

有機廃棄物および廃水からのエネルギー回収は、利用率の低い廃棄物資源を通じてエネルギーを生成するためのコスト効率の高い方法です。

トゥルクの実践その2:

Kakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラントは、トゥルクおよび13の近隣自治体からの廃水を収集して処理します。 2台のヒートポンプが廃熱を利用して、15,000世帯の地域冷暖房を生産しています。植物からのスラッジはバイオガス生産に使用され、地元の電気、暖房、輸送のニーズにカーボンニュートラルソースを介して供給されます。これらは、消費エネルギーの10倍のエネルギーを生成します。

Kakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラント全容               Copyright©️今と未来のあいだで

3, 二酸化炭素吸収源の保護

再生資源を活用し、生態系を保護することを目的としたサーキュラーエコノミー は、海洋、森林、土壌などの天然の炭素吸収源を保護する効果的なツールです。 たとえば、堆肥化の実践を通じて栄養を循環させて土壌に戻すことで、土壌にできる限り多くの炭素が保持されます。

トゥルクの実践その3:

Kakolanmäkiの下水処理場を設置する前は、14の市町村によって下水が個別に収集されていたため、栄養素の回収は最大化されていませんでした。 その結果、トゥルク海域はリン、窒素、および浮遊固形物であることが特徴づけられました。 しかし1つの場所にすべての都市下水処理施設を集中化することで、回収ポイントが少なくなりました。また栄養化の回復により、トゥルク海域のリンが83%減少し、バルト海の水質にプラスの効果がありました。

 

その他の現在の気候変動対策を3つご紹介します。

【カーボンニュートラルエネルギーシステム】
トゥルク地域で使用される熱、冷気、蒸気、電気は、遅くとも2029年までにカーボンニュートラルな方法で生産されます。スマートソリューションとエネルギー効率は、トゥルク地域のエネルギーシステムの開発に活用されます。

【低炭素モビリティ】
公共交通機関とサイクリングインフラストラクチャを開発しています。また、電動モビリティ、サービスソリューションとしてのモビリティ、および低排出物流にも投資しています。

【持続可能な都市構造】
ゾーニング、土地利用、交通計画、および関連する開発プロジェクトを通じて、持続可能性に資する都市構造を運営しています。
現在、街の中心地にあるマーケット広場の外観とインフラを開発中で、2021年に完成予定です。

地域レベルでの気候行動(Climate Action)に向けたコラボレーション
トゥルク市とその周辺地域には、地域の気候変動対策と持続可能な資源管理に貢献する、サーキュラーエコノミー のエコシステムと先駆的なイニシアチブがあります。 市はこれらの関係者と協力してカーボンニュートラルに向けたロードマップを作成したいと考えています。
Circular Turkuプロジェクトは、フィンランドのイノベーション基金Sitraの支援を受けて、地方自治体が包括的かつ協調的な方法でサーキュラーエコノミー を運用するための複製可能なツールを設計することを目指しています。 これらの学習は、都市、専門家、企業、およびその他の関連する利害関係者を結び付けて都市型サーキュラーエコノミー の移行を促進する、ICLEIのグローバルなグリーン循環都市連合を通じて共有されます。

ここで、地域でサーキュラーエコノミー を実践していくための、いくつかのヒントをご紹介します。

分野横断的で循環性のある手段としての地域コラボレーション

  • サーキュラーエコノミー の実践は、通常サイロ化されているセクターをつなげていく必要があります。 これらの領域は、さまざまな部門、自治体、または政府レベルの管轄下にある場合があります。 地域連携により、個々の自治体がサーキュラーエコノミー ・イニシアチブでセクターをまとめる能力が高まります。
  • 地域では、炭素集約型のカテゴリでの材料使用を効果的に管理するための適切なスケールを提供します(建設資材、化学薬品、繊維など)。 循環的で地域的なアプローチを取ることにより、費用対効果の高い方法で材料の使用を最小限に抑えることができます。
  • カコランマキ廃水処理プラントなどの循環インフラストラクチャは、長期的なコスト削減につながりますが、多くの場合、従来のプロジェクトよりも高い先行投資となります。 そのため異なる自治体間のコラボレーションにより、都市および地区はリソースをプールして前払い費用を賄うことができます。
  • サーキュラーエコノミープロジェクトは、従来の一直線型システムの境界外で考え、革新する必要があります。 地域内の大学、企業、コミュニティイニシアチブなどの多様なアクターの集合体は、異なるアクター間の相乗効果の機会を提供します(例えば、産業共生のため、など)。

 

取り組みのまとめ

素材や材料をより循環的に使用することは、地域レベルの気候政策のコアとなります。
サーキュラーエコノミー を実現するためには、再生可能エネルギーの供給、輸送と熱の排出削減、エネルギー効率とともに取り入れるべきです。
サーキュラーエコノミー は、トゥルクとフィンランド南西部周辺の主要な優先事項の1つであり、炭素排出量を削減するイニシアチブがすでに実施されています。 これらのイニシアチブは、カーボンニュートラルなサーキュラーエコノミー の設計において地域協力が果たす極めて重要な役割を示しています。

 

ここまで、トゥルク市の市長であるMinna Arve(ミンナ・アルヴュ)氏により紹介されました。

同氏は

「気候変動の課題は全世界に関係しており、解決策を見つけるには知恵と良い事例を共有することが重要である」

と述べています。

紹介の中にあったKakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラント周辺について少し補足説明しますと、実はここに昔の収容所の建物が残されていました(ヘッダー写真)。それを改築しスパやホテル、カフェ、住宅地にすることで古い建物および収容所という機能を改め、その地域一体に新しい価値を創出しました。

こうした現在あるすべての資源を使って環境負荷を減らしつつ新しいモノ・コトから価値を作り出すのがサーキュラーエコノミー の特徴と言えるでしょう。

 

 

出展元:

New policy brief released by ICLEI
https://talkofthecities.iclei.org/new-policy-brief-released-towards-carbon-neutral-circular-economies-at-the-regional-level/

Kakolanmäki(カコランマキ)
https://www.kakola.fi/ (フィンランド語)

Pohjola Rakennus Oy(ヘッダー画像)

https://www.sttinfo.fi/tiedote/pohjola-rakennus-oy-lansi-suomi-kehittaa-kakolan-aluetta-rakentamalla-satoja-koteja?publisherId=50563861&releaseId=50563878

欧州加盟国内の「海の日」- European Maritime Day

 

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日本の「海の日」は7月第3日曜日だが、欧州連合の海の日は「5月20日」と制定されている。この日にちなんで欧州委員会の環境・海事・漁業総局が主催する“European Maritime Day”が毎年欧州加盟国内の港湾都市で開催される。今年はフィンランドの古都、トゥルク市が開催地であった。

欧州委員会はこの海事業界におけるストラテジー“Blue Growth”を既に策定して公表している。これは“EURO2020”(欧州中期成長戦略2020年)の目標達成に向けて、”Smart”(知的な経済成長)、”Sustainable”(持続可能な経済成長)、”Inclusive”(社会全体を包括する経済成長)の3本柱を貢献するための海事業界の取り組みである。

どんな人がどんな発言をし、現状どうなっているのか。欧州委員会主催の会議に初めて出席してみた。

ルールはあるが実効性が伴っていない

ストラテジーにもあるように、分野毎にやることはもう決まっているのに、各方面の参加者たちからは「実効性がない」という声が多かった。一つには徹底的なデータ収集が欠けているとのこと。これは後に記述するが、ステークホルダーとの連携が成り立っていないようで、それでは収集力は弱くなるという。一つひとつの研究機関は膨大なデータを集めそれを活用しているかもしれないが、公表して必要なステークホルダーと連携しないことにはデータの有効性が伴わない。透明性をもって開示することを今後は実行したいと話していた。そして「もう新しいルールは不要。あとはやるだけだ」とも話していた。

データ収集は何も政府や研究機関だけでなく、企業や社会からも収集する必要がある。定性的なデータは定量的なデータと同じようにさまざまな過程における決定の際の重要データ(判断材料)となる。そしてマルチ・ステークホルダーの連携を強化することにも繋がる。

 

マルチ・ステークホルダーとの連携強化

技術・ガバナンスなど各分野どれもほぼ全員が「ステークホルダーとの連携強化」と強調していた。
なぜそんなに強化しなければならないのかを数人のスピーカーに聞いてみたところ、一つは先ほどのデータ収集の欠如。もう一つは欧州委員会との連携の弱さ(コミュニケーション不足)と話していた。

海事業界は、陸上(港湾周辺)も含めて海上輸送、漁業、沖合ビジネス(採掘ビジネス)などの多方面にわたるため、いくら各分野ごとのストラテジーが策定されても一筋縄では実行および目標達成には繋がらないのである。そのため例えば優先順位をつけて取り組むなど、実行するにあたってのリードを誰かがやるとか、その優先順位項目を決めるなど具体的な行動計画が必要なようであるが、その辺りが不在のようだ。

いくつかのセッションに参加した際に「俺たちは政府抜きで連携してるよ」なんてホンネを漏らしていた参加者もいた。欧州委員会との連携強化は、一つの大きな課題だと感じた。

 

女性の社会進出の促進

日本だけではなく欧州においても海事業界の女性の登用はまだまだ不十分である。今回の会議のスピーカー約50人のうち17人が女性。個人的にはそんなに少なくない印象だったが、やはり北欧諸国から参加した女性たちからは「もっと女性の登用や学生たちへの海事教育を」というコメントがあった。海事関連の女性技術者は年々増えてきているが、船のキャプテンや港湾現場などで働く女性は少ない。どの国・地域も、そして業界においてもダイバーシティーは持続可能性における一つの大きな要素といえる。

SDGs G14へ向けた取り組み

SDGsのG14は「海の豊かさを守ろう」である。この目標に向けた具体的な取り組みやこれに言及したスピーカーは残念ながらいなかった。唯一、World Ocean CouncilのMrs. Christineが「G14は非常に有力な目標なので、何か指標なようなものを策定したい」と言っていたが、現実未着手だという。また先のマルチ・ステークホルダーとの連携強化はG17の達成にも繋がるので、率先して取り組みたいと話していた。

 

さて2017年は英国南部のPoole(プール)市にて開催予定。他業界と比べてかなり複雑な状況にあるため、EURO2020とSDGsの2030年までの目標達成に向けて具体的な実施項目は何か。そして進捗状況は如何に。できるだけ毎年フォローアップしていきたい。

 

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(上): トゥルク市およびトゥルク港のブース。
(中):一番左:欧州委員会 環境・海事・漁業総局のMr.Karmenu
中央:フィンランド農業・環境大臣のMr. Kimmo
一番右:トゥルク市長のMr. Aleksi
(下):ヘルシンキ港周辺で収集されたゴミでつくったアート作品