世界サーキュラーエコノミーフォーラム2017レポート

先日ヘルシンキで「世界サーキュラーエコノミーフォラーム」が開催され、2日間でおよそ1500人以上、105カ国からの参加があり大盛況でした。

オープニングセッションでは、日本の環境副大臣が登壇され、2020年東京オリンピックにおける「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」が紹介されました。周りの人たちへこの話題について聞いてみると、「へぇ~」という反応はありましたが、中には「でもこれはビジネスにはならないよね」という意見もありました。

Screenshot 2017-06-05 13.08.54

日本はすでに「循環型社会形成推進基本法」がありますので、リサイクルや製品ライフサイクルについては特段珍しいものではありませんが、「シェアリングエコノミー」や「製品のサービス化」については、新しいビジネスモデルとして考えていかなければならないと思います。

これについてはフォーラムのいくつかのセッションでも議題に上がっていました。消費者の「心理的要素」があり、現在の消費スタイルから共有スタイルにどう転換させていくかが問題である。例えば「電球を買う」という行為から、『「光」という機能を利用する』という概念に転換することが必要である。「モノ」を買う・持つから、「共有する」「一時的に借りる」という考え方になるには、時間がかかるので、それには法的に税制導入などを考えていく必要もある、などの議論が展開されていました。

リサイクルの専門家たちは日本のリサイクル状況についてはよく知っているようで、「日本から学ぶ」という言葉とともに「リサイクルの基本はあってもそれを応用したりする協働するシステムやより加速させるテクノロジーが必要。また島国だからこそ資源が限られているという状況をもっと知る必要がある」との意見がありました。

フィンランドについては、森林産業が盛んなことから、バイオ分野におけるイノベーションをより活性化させていくことが、強みを生かした転換になるだろうと、各国からの参加者たちから助言されていました。イノベーションの中でも「Radical Innovation = 抜本的で急進的な革命」を強調しています。

ネットワーキングのコーナーでは、中国企業のブースが数多く出展されており、中国におけるサーキュラーエコノミーへの注目度が伺えました。残念ながら、日本からは冒頭の環境副大臣のプレゼンのみでした。リサイクル法はあってもサーキュラーエコノミーについての議論や取り組みがあまり見られない日本の動きに、少々懸念が残りました。ちなみに中国は気候変動についてもEUと協力することを強調していますから、米国がパリ協定から脱退した今、EUと中国の協力体制は非常に大きなものとなっています。

世界の潮流としてこのサーキュラーエコノミーへ転換していく国々が多いなか、日本が遅れをとらないよう、しっかりと議論をし自分たちの考えや役割を提示して取り組んでいく必要があると思いました。「島国だからこそ資源が限られている」これは環境分野だけの問題ではなく、経済そのもの問題になってくるので、資源の有効性をより深く考えて事業や新しいビジネスモデルを創り出していかなければなりません。

最後に、フォーラムの最後を締めくくるメッセジーの中に、非常にわかりやすくそして強調的な言葉がありましたので、それをご紹介します。

“Stop thinking about waste; instead make it a valuable resource”
(意訳)『「廃棄」という概念を捨て、貴重な資源として有効活用しよう』

モノだけではなく、水、空間など見えないもの全てこの地球にあるものを有限な資源として考え、叡智ある人間が協力して新たな経済を作っていくことが重要である。

 

 

 

 

広告

フィンランドのサーキュラー・エコノミーのロードマップ

 

フィンランドの2017年3月期の失業率は9.6%でおよそ26万人が失業中。EU先進諸国の中でトップの経済不況国。そんな状況から打破するべく、今サーキュラー・エコノミー(CE)に力点をおき、フィンランド経済そのものに変革を起こす動きが出てきています。

CEへ移行することにより、2030年までにおよそ75,000人の雇用が創出されるという推計があります。もちろん世界の気候変動対策や再生可能エネルギー革命へ向けた取り組みではありますが、フィンランドの強みの一つである「イノベーション」を用いて、IoT、Fintech、AR/VRなどのテクノロジーでCEを実現していくロードマップ(2016-2025)が策定されました。

以下、概要をお伝えします。

――――――――――――――――――――――――

CEの目標

フィンランドは、過去25年にわたる持続可能な開発を構築してきた、世界初の持続可能な開発に関する国家委員会を設立している。そこでは、幅広いステークホルーダのメンバーシップで構成され、そのメンバーの合意は今でも受け継がれている。このステークホルダーの参加により、国家の指導的役割と企業と異なるステークホルダー間の協力強化、輸出成長の追求、さらには国内市場のテストプラットフォームとして使用することを視野に入れて策定された。

都市化、気候変動、人口増加、高齢化などの世界的な課題から生じる機会に基づいてターゲットを設定。さらにフィンランドの強みとするIoT、Fintechなどのテクノロジーの専門知識と、小国家ならではのさまざまな分野との垣根を超えたコラボレーションを強化する潜在能力を基本としている。

そして2025年までには、以下を実行することでCEにおける世界的なリーダーになるとしている。

企業と輸出の成長を目指したCEの包括的な解決策を創造
国内市場の機能性を確保
迅速な行動と具体的な試行、CEへのメインストリーム化

 

2025年までの達成項目

フィンランドの競争力を強化し、新しい雇用と持続的な成長を創造。これにより、フィンランドの経済には少なくとも30億ユーロの付加価値が生まれ、「温暖化効果ガス排出と自然資源の消費の増加」と「幸福と経済成長」について切り離して考えることに貢献できる。

以下、経済、環境、社会分野の視点から具体的な達成項目をあげる。

経済分野:フィンランド経済の新たな基盤となる
・CEによって企業の競争力を向上。売り上げ高や新技術のイノベーションをもたらす
・輸出上の利点となり、国際化を望む企業の数を増加
・資金調達モデルの改革によりCEを支え、公的調達や共同組合などの援助を利用
・環境改善によって新たな成長とビジネスの創出

 

環境分野:資源枯渇に対する解決のモデル国として
・資源効率の大幅向上
・マテリアルサイクルをより効率的にし、再生可能な天然資源が再生不可能な資源に取って代わり、カーボン・ニュートラルで廃棄物のない社会へと移行
・CEはフィンランドの生態学的な持続可能性を向上
・CO2排出量や汚染負荷などの環境影響をより抑制

 

社会分野:適応者から先駆者へ
・社会的行動のための政策手段を決定する際に、CEが考慮されるようになる。公共部門においては、幅広い方法でCEに参加する。官庁、民間、第三セクター間の官民パートナーシップが重要な役割を果たす
・フィンランドに幸福をもたらし、サービスと共有経済(シェアリング・エコノミー)への移行を促進
・CEの認識は向上し、国内市場の需要回復と、CEの製品やサービスの注目が集まる
・消費者はサービスやリサイクルの共有など、新しい消費モデルを取り入れる

 

主要4分野にフォーカス

以上のことを踏まえてCEへ移行するためには、システムの変化が必要である。異なる組織や産業間において、新しい運用方法や考え方を変える必要がある。それには最も重要な分野に焦点を当てる必要があり、まずは4つの分野を選択。4分野に加えてそれらを体系的に変化させるための国際的な共同行動を、5つ目の分野として設定した。

1、持続可能な食料システム
より持続的で総体的なシステム開発に関与する。

2、森林を基本としたループ
森林産業は昔からフィンランドの主要産業。CEにおいても強みであることは変わらず、最善の専門分野と認識。

3、テクニカル(技術的)ループ
ここでは製品のライフサイクルの延長に焦点。フィンランドの強みであるIoTにより、ループ全体を長くして物質価値を最大化することで、製品のインテリジェンスが高まり、そこからサービスが生まれる可能性がある。

 

4、輸送交通と物流ループ
この分野は相乗効果が最も高い。物流能力の利用レベルの向上、化石燃料の再生可能または代替エネルギーへの転換、輸送ルートの最適化を図るためのソリューションなど。デジタル化では、旅客輸送におけるスマート輸送(Maas = Mobility as a Sercive、サービスとしてのモビリティ)へ移行し、より資源効率を高める。

 

5、国際的な共同行動
以上4分野を実行しそれぞれを達成するためには、政府、企業、大学、研究機関、消費者、市民などと体系的な変化が必要。それにはコミュニケーションと多様な相互作用が重要である。

 

ロードマップのアクション

以下3つの方法によって促進される。

・政策アクション:CEへ円滑に移行するためのコスト効率やその他の管理上の前提条件を合理化、調整、改善する方法などを立法上で実施

・主要プロジェクト:上記4分野のプロジェクトを実施

・パイロットプロジェクト:既存の技術革新とベストプラクティスを普及

 

―――――――――――――――――――――――-

いかがでしたでしょうか。
所々に過去記事とリンクした内容がありますので、適宜ご参照ください。

日本と比べて人口およそ20分の一の国家の生き残りをかけたサーキュラーエコノミー・ロードマップ。長引く不況から打破するための「雇用政策」でもあり、気候変動などの「環境対策」でもあり、現在改革中の社会福祉制度に対する「社会政策」でもあり、そして今年独立から100年を迎えた小国家としてのこれからの「サバイバル政策」でもあります。

フィンランドの特徴ともいえる「国際競争力」「イノベーション」「国家の安定度」「透明性」などをどう活かしていくのか。

既存の研究分野でもあるバイオテクノロジー、工業デザイン、健康とセキュリティにおけるICT、ワイヤレス・テクノロジーなどあらゆる分野においてイノベーションが起こせる可能性を秘めている国、フィンランド。

過去ノキアのような栄光を再び見ることはできるのでしょうか。サーキュラーエコノミーのリーダーを目指して、まずは6月5日~7日にヘルシンキで開催される「世界サーキュラー・エコノミー・フォーラム2017」のホスト国としての存在をアピールすることでしょう。

このフォーラムの様子は後日お伝えする予定です。