さようなら 2016年

 

今日12月28日は、日本の仕事納めですね。ここフィンランドでは特にそういう習慣はなく、強いて言えば先週クリスマス直前に”Season’s Greetings”を出す方たちが多く、これを以て「今年の私の仕事はおしまいです」という雰囲気があります。

さて今年2016年もいろいろありました。ざっと「サステナビリティ関連」「フィンランド全般」そして「個人」を振り返ってみましょう。

1、サステナビリティ関連

昨年2015年に採択されたSDGsのレビューがあり、各国の取り組み状況をランクづけたSDGs Indexが発表され、フィンランドは149カ国中4位と健闘。日本は18位。これから15年間と長い道のりですので、ランキングで一喜一憂することなく、国、地方自治体、各企業、市民社会とそれぞれのステークホルダーでやるべきことを洗い出し地道に取り組んでいくことが求められます。

日本政府の動きとしては、SDGs推進本部が設置され、年末間近に第二回の会合を開催。8つの優先課題と140の施策を決定。「国際保健の推進」「難民問題の対応」「女性の輝く社会の実現」などに取り組んでいく模様。

国際的な動きとしてはなんといってもパリ協定。結局日本は第一回締約国会議にはオブザーバーとしての参加となり、出遅れ感満載のスタートとなりました。この協定において欧州連合は、2030年までにGHG排出量を1990年比で少なくとも40%の削減目標を掲げています。

これに追随して欧州各国、特にドイツは2030年までにガソリン自動車の販売禁止、オランダ、ノルウェーは2025年から販売禁止を検討、というレベルの目標を立てています。さて、日本はいかに?

続いてGRIですが、G4発行からわずか2年弱で「GRIスタンダード」を発行。これについては前回書きましたので割愛しますが、2018年7月までにこのスタンダードへ完全移行することになります。今後G5, G6, G7,,,,,という方向ではなく、モジュール化(形式化)の変更ですので、部分部分の見直しとなります。

そして生物多様性の国際会議COP13が12月上旬に開催され、農業、林業、漁業そして観光業が統合して生物多様性の保護に取り組んでいくことが決議されました。

その他加速した動きとしては、ビックデータの活用をこのサステナブルな世界でも取り込んでいくことが各方面で推進されています。例えば世界中にわたるサプライチェーンのデータ把握に高い透明性とタイムリー性のあるビックデータを使用することが、これからは主流となってくるでしょう。

この他にも各分野でいろいろな動きがありましたが、個人的にはこうした動きに注目した一年でした。

 

2、フィンランド全般

2016年も長引く不況から脱出できなかったフィンランド。政府の最新報告によると2016年11月のGDPはわずか1.6%。失業率は8.1%と不景気邁進中の状況です。確かこの数字、昨年2015年の最後のブログで書いた内容とほぼ同じかと。

欧州委員会からもフィンランド、イタリア、キプロス(確か)は最悪な経済状況であると指摘。にもかかわらず際立った雇用対策やビジネス創出策は見当たらず。人口550万人の小市場であることから、どんどん国外に雇用が流れているという話も聞きます。

サステナビリティと関連した話しでいうと、フィンランドでは「アジェンダ2030」という国家戦略があり、その中でつい先日国家エネルギーおよび気候戦略が見直され、2020年代までに再生可能エネルギーを50%増やし、長期的に炭素中立(カーボンニュートラル)エネルギーシステムの構築を目指すことになりました。

これに伴い新しい支援プログラムおよび雇用創出が見込まれ、いよいよ景気が回復するかと期待している人々も少なくありません。いや、もういい加減に不景気から脱出しましょうよ。

この他には、9月にネオ・ナチ団体のデモにおいて、反デモの一人がデモの参加者に暴行され、その一週間後に脳出血で亡くなった事件がありました。これを機に国内では一気に「北欧抵抗運動」への反対の機運が高まりました。そして独立記念日である12月6日には、またネオ・ナチ団体のデモが展開されると同時に、このデモの参加者一人あたり0.05ユーロとして実際の参加人数分を各人種団体へ寄付するというキャンペーンが展開されました。

外国人排斥も意外と発生しており、日本からみるフィンランドとは実際は異なります。

来年2017年はフィンランドの独立100周年を迎えます。景気回復やこうした人種差別などの解決に、どう取り組んでいくのか。100周年の祝賀ももちろん大切ですが、この節目の年に国としての意義や未来像を打ち出していくことも期待されています。

 

3、個人として一年を振り返って

最後に個人としてこの一年を振り返ると、今年はおかげさまで多方面からお声がかかり多くの人たちとの出会いがありました。母国日本からはフィンランドの乳幼児用ミルクについてやサステナビリティ関連はもちろん。フィンランドではさまざまな会議やセミナーに参加して、フィンランドをはじめ欧州各国、遠く離れた南米やアフリカ大陸の人々との出会いがありました。

こうしたつながりを持てたことに感謝しつつ、来年はより仕事につなげてここフィンランド発のCSR・サステナビリティの情報を発信していきたいと思います。

今年一年ご愛読をありがとうございました。
それでは良いお年をお迎えください。

Rauhallista Uutta Vuotta!

Photo by : http://meriharakka.net/2014/12/12/auringonlaskuja/fullsizerender/

 

平等で民主的、多様的な社会をめざすフィンランド

12月6日は、フィンランドの独立記念日だ。1917年にロシア帝国からの独立と完全自治宣言が採択された日である。

今年2016年は99周年にあたり、2017年は独立100周年にあたる。今年はこの100周年に向けてさまざまなイベントや企画がはじまり、来年の12月6日が待ち遠しい雰囲気になってきている。

そんな中、北欧の極右翼団体が100周年の独立記念を目指して愛国心活動を活発に展開している。今年9月にはヘルシンキでネオ・ナチ団体デモが展開され、これに反対した一人の若者がデモ隊の一人に暴力を振るわれ一週間病院で治療を受けたのち、脳出血で死亡した。

この事件はフィンランド全土に「人権とは何か?」「多様性とは何か?」ということを再認識させる出来事でもあった。同時に亡くなった若者の勇気を讃え、決してデモなどには屈しないという意見があちこちから聞こえてきた。

そして迎えた先日12月6日。この日も同じくヘルシンキ界隈でネオ・ナチ団体のデモが数団体、数箇所で展開される、というニュースが事前に流れてきた。

そこに画期的な情報が入ってきた。このネオ・ナチ団体のデモに参加した実際の人数 x 0.05ユーロを各人権団体へ寄付する、というキャンペーンだった。

キャンペーンの趣旨は、フィンランドの独立とは「平等で、民主的で多様的な社会を意味する」と考えるフィンランド人に、ファシストなどの極右翼を反対する機会を与える、というもの。さらに先の殺傷事件など過去の背景もあり、こうしたキャンペーンを展開する良い機会だという。

実際にネオ・ナチ団体には何人参加したかというと、警察の公式発表で180人。180 x 0.05ユーロで一人最低9ユーロを人権団体へ寄付することになった。

このキャンペーンには9,396人が参加し、フェイスブックでは2万以上のシェアがあったという。平均一人あたり0.13ユーロの寄付額にのぼり、およそ22万ユーロのキャンペーン額となった。

寄付に参加した人へは、各人種団体のリストが送られてくるのでそこへ自ら寄付するという。このキャンペーンの主催者は安全上のリスクを考慮し匿名を名乗り、参加者との直接の接触を避けている。

もちろん私自身もこのキャンペーンに参加し、フィンランドに由来のある人種団体へ寄付した。私自身、ここでは移民外国人のマイノリティーの一員として、いつ差別を受けてもおかしくない環境にいることも再認識した。

折しも独立記念日の4日後の今日12月10日は、世界人権の日。フィンランドは男女平等、多様性のある社会と評価されているが、こうした事件は後を絶たず、最近では難民への差別なども発生している。

100周年を目前にしたフィンランド共和国。より民主的な社会をつくるために、こうした反デモキャンペーンを展開する国民性に、やはり度肝を抜かれたのであった。