GRIスタンダード発行

企業の社会的責任やサステナビリティの情報開示の設定基準を行うGRIは今年、G4ガイドラインを基本としたGRIスタンダード(GSSB=Global Sustainability Standards Board)を発行した。

G4が発行されたのが2014年。2015年12月までに完全移行しながら、実はこの時すでにGSSBへの改訂の議論が始まっていた。
今回のGSSB発行セミナーの北欧地域は、スウェーデンのストックホルムにて開催されたので、前回に引き続き参加した。G4からGSSBへの変更内容は、GRIのWebサイトをはじめ各地域開催のセミナーにて説明されているのでそこは割愛し、なぜまた短期間でガイドラインの基準を変更するのか。今後のレポーティング周りの動向は?などセミナーで交わされた議論や質疑応答を中心に紹介する。

スタンダードへの移行理由

Webサイトに掲載されているかと思ったらあまり詳しく書かれていないようなので、セミナーでわかりやすく説明していたものを紹介する。

移行理由は大きくわけて3つ。

1、モジュール単位ごとの更新
その背景としてCOP22やSDGs、先日採択されたEUの非財務報告書の発行義務化などの外部環境の変化にタイムリーに対応できること。

2、中小企業への対応
グローバル企業を中心とするガイドラインのイメージ(実際人的資源、財源なども大企業でしか賄えない)であったが、世界中のより多くの企業がこのレポーティングに参加し、持続可能性へ向かうように促進する。

3、情報開示における表現の明確化
情報開示に必要な要件”Requirement”を”Shall”、
推奨事項”Recommendation”を”Should”、
ガイダンス”Guidance”を”Can”
と明確化した。

この背景は非財務報告書の世界における共通用語を提供する立場であることを表明し、より多くの企業が準拠・参照するための理解を簡潔するものである。

 

各指標やガイドラインとの連携

12月7日にEUの非財務報告書発行の義務化(EU Directive on Non-Financial reporting)が採択された背景もあり、GRIとしてはCOP22やSDGsなどの外部環境との連携を取り、非財務報告における情報開示の世界的な共通言語を提供していくことになる。

各指標やガイドラインとの連携はすでに始まっており、SDGsとのマッピング、CDPの質問事項とのマッピング、IIRC(統合報告)のフレームワークとの連携などがあげられる。

 

インパクト測定は必須?

質疑応答の中で一番時間を割いたのは、インパクトについて。実はG4のインパクトについて、「組織自体のインパクト」と誤った解釈が多くみられたため、GSSBでは「インパクトとは、組織の事業活動が経済・環境・社会など外部環境に対してどのように影響を及ぼすか」という明確な定義を記載した。よって、外部環境の影響度を測定する必要が出てくるのではないか?という質問が多く寄せられた。

では誰が、どうやって、測るのか?そこまでGRI内では議題にあがっていないようだった。SDGsの達成度なども関連してインパクトを測定する必要性は、GRI側も参加者側も共通認識であった。

 

今後のGSSBの適用性とは

ビジネスモデルやバリュー・チェーンにおいて、サステナビリティの情報開示や統合性をどう活用させるか?を主題におき、パネルディスカッションが行われた。

パネリストは
● Nasdaq Sweden
● Nordea Sweden (Head of Sustainability dept)
● WWF
● Save the Children Sweden (SCS)の4人。

Q1、中小企業への対応は?
移行理由の2番目に挙げられていながら、未だ議論が絶えない中小企業への対応課題。中小企業が準拠・参照するメリットはあるか?という問いに対して、パネリスト全員が「ない」と答えた。主な理由は、「作業過程が多すぎて時間と資金ロス」「短期計画でやるなら意味がない」など。もし準拠・参照するならば「デイリーベースでデータを収集し、自動的にタイムリーに更新できるデータの仕組みづくりが必要」という意見があった。
ただ北欧やバルト海諸国は中小企業が主なビジネスを営んでいることから、GSSBが中小企業を対応したことは歓迎している模様。

Q2、サステナビリティに向かうための重要な課題や連携とは?
北欧はすでにサステナビリティが一般化しているので、それをより強化するための施策について各スピーカーに問いていた。
「革新的なビジネスモデル(Nasdaq)」「継続的にサステナビリティマネジメントを行う(Nordea)」「ステークホルダーから(へ)の信頼(WWF)」などが挙げられていた。

さらにWWFはダイアローグの強化を強調していた。デイリーベースで定性的・定量的な議論の展開を行うことでステークホルダーとパートナーシップが築けるということも。

SCSは、市民社会との連携を強調。どうしてもこういう団体だとチャリティーやフィランソロピーを目的として活動するが、もうその視点ではなくわれわれ人間の毎日の暮らしを営む社会の影響力を真剣に考えていかなくてはならない。そして建設的な議論を行うことで昨今の社会的課題を解決していく。

Q3、企業コミットメントの実践的なアプローチとは?
「マテリアリティを経営に取り組む (Nordea)」「戦略や目標の策定 (WWF, Nasdaq)」「サプライチェーン・マネジメントの強化 (SCS)」など。
ビジネスモデルの変革を積極的に行い、ステークホルダーと実践的なダイアローグを実施し、それを経年で追跡していくこともコミットメントのアプローチの一つと考えられるとの意見もあった。

Q4、2017年のキーポイントは?
「税制措置を取ることで持続可能性へより拍車をかける(具体的な税制案はなかった)(SCS)」「リスクと機会 (Nordea)」「各種ガイドラインや指標の明確化 (Nasdaq)」「水のリスクと機会、社会のインパクト (WWF)」

市民社会との連携や社会のインパクト、また税制措置をどう考えるか、という議論は民意度が高く福祉国家である北欧らしい展開だと感じた。

この他に地元スウェーデン企業のプレゼンがあり、ここ数年で増加している難民への対応を企業としてサステナビリティの視点でどう考えるか、という議論もあり、多様性を営む国家の一員としての対応も垣間見られた。

GSSBは2018年7月から正式に準拠ガイドラインとなるので、来年2017年のレポートはGSSBの準拠または参照ということになろう。