EU経済の足を引っ張るフィンランドの経済不況

ここ5,6年ずっと経済不況から脱出できずにいるフィンランド。日本ではこのニュースは伝えられていないかもしれないが毎月の失業率はぼほ9%のままで、今年もまた経済回復できずに2017年を迎えそうだ。

先日EU委員会から「2016年の政府予算計画をもっと具体的に。財政赤字はGDPの0.6%に低減するべき。フィンランドはEU諸国の中で最悪の経済状況だ」という指摘があったという。それに対して財政大臣のOrpo氏は、「経済状況は深刻ではあるが、このレベルはまだ最悪とは言えない」などと発言。

数日後にEU委員会へ返答した内容は、具体的に労働力全体の実質賃金をカットする競争力協定を締結し、4万人の雇用を生み出す。また社会保険制度の改革を進め、将来に向けて国の貯蓄を確保すると述べている。

EU委員会によれば、フィンランドのほかにイタリア、キプロスの経済不況が最悪の状態だという。

前回書いたフィンランドの強みは「イノベーション」と「テクノロジー」だ。これを武器に経済回復を、と各方面で言われているが中々画期的なものは今のところ出てこない。

来年2017年は、フィンランド共和国の独立100周年の年だ。この年に少しでも景気回復をと期待するのは、何も移民の私だけでなく周りのフィンランド人たちもいいかげんそう願っている。

フィンランドはもう「夢の国」でも「理想郷」でも何でもない、不景気真っ只中の共和国である。

フィンランドの難民受け入れ大作戦

今月に入ってから、シリアやイラクからの難民が欧州へ押し寄せているというニュースが連日報道されている。ここフィンランドでもその報道は過熱しており、SNSなどでは人道的支援を呼びかけている。

フィンランドは、以前より難民や私のような移民を積極的に受け入れてきており、受け入れ後の語学学習や社会保障などは、日本人からすると有り難いぐらいに手厚い制度が整っている。難民の起業サポートも充実している。
それは国の人口わずか540万人だからこそ、こうした難民、移民を受け入れてこなければ、今後の高齢化社会に向けて国全体の労働力が失われる、という考え方があるのだろう。もちろん、人道的支援という根本的な考えがあってのことだが。

こうして歴史的に難民を受け入れていれているフィンランドでは、今回どのような動きがあるのか、かいつまんでみてみようと思う。

まずは、大統領が率先して難民受け入れ宣言を発表。そしてその2日後には、今度は首相が自宅の一部を約20名ほどの難民へ提供する、との宣言。首相の心の深さに同情する、という賛成意見もあれば、困惑している近所の住民ももちろんいる。

このような「ホームスティ」型で難民を受け入れることは今まで違法であったのだが、今回のこの動きを受けて早急にガイドライン作りに着手したようだ。しかし見切り発車状態で問題が山積しているとの見方もある。

いやこの動き、日本人からするとものすごく早くて驚いたのだが、それは私だけだろうか。以前の同性婚の法律が制定されたときにも感じたこの「国が動いている」感覚。

日々社会が動いているのに、数十年前の法律や制度のままでどうやって現状を解決できるというのだろうか。そんなことを一挙に打破するかのようにこの国の政治はすぐに動く。それが一般市民に手に取るようにわかるのだ。

そして難民に対する賛成意見と反対意見の対立が明確に分かる。これは民主主義国家としてデモがすぐに展開され、そして報道される。報道の自由度はちなみに世界トップであるから、報道されないとなるとこれまたデモが起きる。

一方の市民レベルの動きはというと、即座に赤十字社を中心とするボランティア活動が始まった。首都ヘルシンキを皮切りに地方都市など全国レベルで展開するらしい。

そんなニュースを聞いていたらFBでもボランティアや衣類などを募る投稿が流れてきた。我が家が住んでいる地方都市には、既に500人もの難民がおり、さらに100人を受け入れる予定だそう。これからの季節に備え防寒服を特に募っていて、今の段階では男性物が足りないとのこと。微力ながら我が家から5袋を寄付した。

Punainen risti

「近くの赤十字社内に設けてある『難民受付センターへの寄付はこちらへ』との案内板」

ちなみに国内の難民受け入れ施設および難民の人数は、以下の通り。

黒丸が既存施設、緑色が予定地、赤色は一時的な緊急施設地となっている。

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出典:(9月5日付けの記事)

また企業レベルでは、フィンランド中央銀行の総裁が、1カ月分の給与を赤十字社を通じて寄付するとの報道があったり、フィンランド企業のFinlaysonが寝具セットを、Elisaが携帯を寄付するなどの動きが出てきた。企業の社会貢献の一環であることを承知の上での活動だ。

そしてつい先日、ヘルシンキでは難民たちを受け入れる“SuomiSaysWelcome”という歓迎イベントが首都ヘルシンキを中心にいくつかの地方都市でも開かれた。

さて。ここまで書くといかにもフィンランドは難民受け入れに積極的で全国民が賛成および歓迎しているかのように聞こえるが、もちろん眉間に皺を寄せて複雑な感情を持つ人や断固として反対という人も多くいる。

「複雑な感情」とは、難民たちが離ればなれになっている家族や友人たちとの連絡ツールにWifi通信でスマホを使用したい、という願いに対してのようだ。確かに家族揃って移動してきた人々ばかりではないだろう。そうなると何かしらの連絡手段が必要で今の時代はやはりスマホ1台ないと困るのだろう。昔だったら、公衆電話の前に長蛇の列をして連絡を取るだろうけど、21世紀の難民たちの通信手段はそうはいかない。

それに対して、衣食住だけでも予算や人手が必要なのに通信網までも!となると、やはり「え?」という感情を抱く人はいるようだ。前述のElisa社やIT企業が携帯電話やスマホ、そしてWifiルーターなどを寄付しているらしいが、果たして希望者全員に行き渡るのか。

これは企業の社会的責任の一環である社会貢献活動であると言えるので、企業側からしたら良いインセンティブになるだろうけど、国民側からしたらやっぱり複雑な思いなのかしら。

そして断固して反対派の主な意見は、フィンランド国内は今もの凄い勢いで不況に陥り、ほぼ毎月のように企業からの解雇命令が出て失業者も増加しているのに(失業率は2ケタに)、難民を助けている場合ではない。そんな余裕があるならまずは自国民を助けろ!というデモが相次いでいる。

そんな賛成反対の意見があっても難民は日々増え続けている。

9月半ばを過ぎ、スウェーデン経由で到着した人々が約1600人いるという。これは、スウェーデンよりもフィンランドの方が難民申請に時間がかからない、という理由らしい。そのため国境付近のラップランドでは、入国監視に力を入れ始めたようだ。

近い将来、EU諸国内でいち早く高齢化社会になると予測されているフィンランド。今からその対策を取る段階に来ているのかもしれない。