北欧諸国の海洋バイオ・エコノミー

昨年末にフィンランド政府にて、北欧諸国における海洋バイオ・エコノミーの2025年に向けたロードマップが採択された。

この海洋バイオ・エコノミーとは何か?「再生可能な海洋および淡水資源の持続可能でスマートな利用に基づく、事業活動および価値創造」と定義されている。以下に簡単な概要を照会する。

ビジョン:Nordic Blue Bioeconomy 2025
・ 北欧諸国における雇用と能力の創出
・ 海洋および淡水環境とバイオ資源の良好な地位を維持し、世界市場に向けた商品とサービスを生産・開発

対象セクター:
養殖、特に魚やその他の水生動物の養殖、食糧、化粧品およびに製薬製品。また水専門知識および技術に基づく事業、水域および水生環境に基づく観光およびレクリエーション、水生生物資源の利用などの事業活動も対象。

戦略目標:
・ 効果的な研究開発とイノベーション、ネットワークとプラットフォームの構築
・ 持続可能な成長を支えるグッド・ガバナンス
・ 結果指向に基づく国際協力

テーマ:
・ 海洋とフレッシュウォーター・バイオマス
・ 水産物の生産と技術
・ ウェル・ビーイングのための海洋と水資源
・ ノルディック・ウェイのノウハウとウォーター・テクノロジー

そもそもなぜ北欧諸国がこの海洋バイオ・エコノミーを目指すことになったのか。それは、この分野において世界で優れた立場にあり、高い基準と多様な専門知識を持っていること。開発作業においては、市場主導型のアプローチを取り、革新性やリソースの効率性を持っていることが背景となっていいる。。また北欧諸国は、新製品やサービスを創出するために、企業との研究やイノベーション活動を増やす努力があることも、こうした取り組みを後押しするものと思われる。

今年2017年は、まず3つの戦略目標を実装していくことから始める。またポリシーや戦略をEU諸国全体はもちろん、北極圏をも含めて浸透させる。北欧諸国は北極評議会の主要メンバーで、フィンランドにおいては今年2017年から2年間の議長国を務めることになっており、この分野での取り組みが一層求められていくであろう。

ちなみに日本はこの北極評議会のオブザーバー国であるため、北極圏における海洋バイオ・エコノミーについては、どこかで耳にするかもしれない。逆にいえば、オブザーバー国でも率先して北極圏の持続可能性を考えていくことが、日本の国際的な持続可能な取り組みとして評価される可能性もある。
日本企業の対象セクターの方々は、これを参考に自社の生物多様性の取り組みやビジネスモデルを考えてみるのも良いだろう。

リソース:
http://valtioneuvosto.fi/en/article/-/asset_publisher/1410837/pohjoismaat-tavoittelevat-sinisen-biotalouden-kasvua (フィンランド政府)

http://mmm.fi/en/article/-/asset_publisher/clean-water-and-fisheries-resources-and-water-resources-expertise-to-boost-finnish-exports (フィンランド農林水産省)

Photo by :
http://www.huffingtonpost.com/kirsti-kauppi/why-us-nordic-relations-matter-more-than-ever_b_9807606.html

広告

欧州加盟国内の「海の日」- European Maritime Day

 

Photo 1.5.2016 11.46.45

日本の「海の日」は7月第3日曜日だが、欧州連合の海の日は「5月20日」と制定されている。この日にちなんで欧州委員会の環境・海事・漁業総局が主催する“European Maritime Day”が毎年欧州加盟国内の港湾都市で開催される。今年はフィンランドの古都、トゥルク市が開催地であった。

欧州委員会はこの海事業界におけるストラテジー“Blue Growth”を既に策定して公表している。これは“EURO2020”(欧州中期成長戦略2020年)の目標達成に向けて、”Smart”(知的な経済成長)、”Sustainable”(持続可能な経済成長)、”Inclusive”(社会全体を包括する経済成長)の3本柱を貢献するための海事業界の取り組みである。

どんな人がどんな発言をし、現状どうなっているのか。欧州委員会主催の会議に初めて出席してみた。

ルールはあるが実効性が伴っていない

ストラテジーにもあるように、分野毎にやることはもう決まっているのに、各方面の参加者たちからは「実効性がない」という声が多かった。一つには徹底的なデータ収集が欠けているとのこと。これは後に記述するが、ステークホルダーとの連携が成り立っていないようで、それでは収集力は弱くなるという。一つひとつの研究機関は膨大なデータを集めそれを活用しているかもしれないが、公表して必要なステークホルダーと連携しないことにはデータの有効性が伴わない。透明性をもって開示することを今後は実行したいと話していた。そして「もう新しいルールは不要。あとはやるだけだ」とも話していた。

データ収集は何も政府や研究機関だけでなく、企業や社会からも収集する必要がある。定性的なデータは定量的なデータと同じようにさまざまな過程における決定の際の重要データ(判断材料)となる。そしてマルチ・ステークホルダーの連携を強化することにも繋がる。

 

マルチ・ステークホルダーとの連携強化

技術・ガバナンスなど各分野どれもほぼ全員が「ステークホルダーとの連携強化」と強調していた。
なぜそんなに強化しなければならないのかを数人のスピーカーに聞いてみたところ、一つは先ほどのデータ収集の欠如。もう一つは欧州委員会との連携の弱さ(コミュニケーション不足)と話していた。

海事業界は、陸上(港湾周辺)も含めて海上輸送、漁業、沖合ビジネス(採掘ビジネス)などの多方面にわたるため、いくら各分野ごとのストラテジーが策定されても一筋縄では実行および目標達成には繋がらないのである。そのため例えば優先順位をつけて取り組むなど、実行するにあたってのリードを誰かがやるとか、その優先順位項目を決めるなど具体的な行動計画が必要なようであるが、その辺りが不在のようだ。

いくつかのセッションに参加した際に「俺たちは政府抜きで連携してるよ」なんてホンネを漏らしていた参加者もいた。欧州委員会との連携強化は、一つの大きな課題だと感じた。

 

女性の社会進出の促進

日本だけではなく欧州においても海事業界の女性の登用はまだまだ不十分である。今回の会議のスピーカー約50人のうち17人が女性。個人的にはそんなに少なくない印象だったが、やはり北欧諸国から参加した女性たちからは「もっと女性の登用や学生たちへの海事教育を」というコメントがあった。海事関連の女性技術者は年々増えてきているが、船のキャプテンや港湾現場などで働く女性は少ない。どの国・地域も、そして業界においてもダイバーシティーは持続可能性における一つの大きな要素といえる。

SDGs G14へ向けた取り組み

SDGsのG14は「海の豊かさを守ろう」である。この目標に向けた具体的な取り組みやこれに言及したスピーカーは残念ながらいなかった。唯一、World Ocean CouncilのMrs. Christineが「G14は非常に有力な目標なので、何か指標なようなものを策定したい」と言っていたが、現実未着手だという。また先のマルチ・ステークホルダーとの連携強化はG17の達成にも繋がるので、率先して取り組みたいと話していた。

 

さて2017年は英国南部のPoole(プール)市にて開催予定。他業界と比べてかなり複雑な状況にあるため、EURO2020とSDGsの2030年までの目標達成に向けて具体的な実施項目は何か。そして進捗状況は如何に。できるだけ毎年フォローアップしていきたい。

 

Photo 18.5.2016 8.43.38Photo 18.5.2016 15.15.55Photo 18.5.2016 15.27.48

(上): トゥルク市およびトゥルク港のブース。
(中):一番左:欧州委員会 環境・海事・漁業総局のMr.Karmenu
中央:フィンランド農業・環境大臣のMr. Kimmo
一番右:トゥルク市長のMr. Aleksi
(下):ヘルシンキ港周辺で収集されたゴミでつくったアート作品