2045年にはカーボン・ニュートラル達成   フィンランド政府

 

世界初の炭素税を1990年初めに導入したフィンランド。現在、2050年までにCO2排出量を1990年の水準から80〜90%削減することを目標としている。これは昨年発効されたパリ協定を実施する一つの手段として、政府が掲げた戦略だ。その中に2030年までには25万台の電気自動車と5万台の天然ガス自動車を導入するなど、石炭使用の完全撤廃および石油使用も半分にするなどの戦略も掲げている。

「遅くとも2045年には、CO2排出量と炭素吸収源のバランスが取れる。フィンランドの森林はCO2排出を吸収する役割がある。森林管理を通じて、高水準な炭素吸収を維持しCO2排出削減の解決を担っていきたい」と環境大臣は公式発表している。

 

世界の温室効果ガスの排出量は、実は北欧諸国における排出削減のソリューションによって、大幅に削減される可能性があるとの調査が発表された。

この調査は、北欧地域において実績のある15項目の既存の気候ソリューションを検討するもの。2030年までに世界の排出量を4.1ギガトン(GtCO2e)の削減を予測。削減額は現在のEUの総排出量に相当。そして熱と電力生産の統合により、日本で毎年排出される量とほぼ同量を削減できると示唆している。

主な15項目のソリューションは、1)北欧の特有性2)実証済みの気候影響3)分析の可能性4)スケーラビリティの4つの基準を元に選択。

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フィンランドが貢献できるソリューションは、熱と電力の総合エネルギー、事業における低炭素エネルギー、輸送におけるバイオ燃料、バイオエネルギー。

ちなみに私が住むフィンランド南西部の古都トゥルク市では、「カーボン・ニュートラル 2040」の目標を掲げ、現在公共バスの1路線に電気バスが運行している。

ソリューションの利益として、有害な大気汚染や騒音を減らすことで健康を促進する効果のほか、新規雇用の創出にもつながるとしている。

一方のリスクとして、多額の初期投資から補助金やエネルギー価格の設定、予測不可能な社会的または環境的な負の影響などが考えられている。

北欧諸国の既存または新規ソリューションを世界に提供することで、気候変動への取り組みを促進することは間違いない。パリ協定が発効された今、待ったなしの措置に拍車がかかる。

 

リソース:フィンランド政府Nordic Green to Scaleトゥルク市photo

欧州加盟国内の「海の日」- European Maritime Day

 

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日本の「海の日」は7月第3日曜日だが、欧州連合の海の日は「5月20日」と制定されている。この日にちなんで欧州委員会の環境・海事・漁業総局が主催する“European Maritime Day”が毎年欧州加盟国内の港湾都市で開催される。今年はフィンランドの古都、トゥルク市が開催地であった。

欧州委員会はこの海事業界におけるストラテジー“Blue Growth”を既に策定して公表している。これは“EURO2020”(欧州中期成長戦略2020年)の目標達成に向けて、”Smart”(知的な経済成長)、”Sustainable”(持続可能な経済成長)、”Inclusive”(社会全体を包括する経済成長)の3本柱を貢献するための海事業界の取り組みである。

どんな人がどんな発言をし、現状どうなっているのか。欧州委員会主催の会議に初めて出席してみた。

ルールはあるが実効性が伴っていない

ストラテジーにもあるように、分野毎にやることはもう決まっているのに、各方面の参加者たちからは「実効性がない」という声が多かった。一つには徹底的なデータ収集が欠けているとのこと。これは後に記述するが、ステークホルダーとの連携が成り立っていないようで、それでは収集力は弱くなるという。一つひとつの研究機関は膨大なデータを集めそれを活用しているかもしれないが、公表して必要なステークホルダーと連携しないことにはデータの有効性が伴わない。透明性をもって開示することを今後は実行したいと話していた。そして「もう新しいルールは不要。あとはやるだけだ」とも話していた。

データ収集は何も政府や研究機関だけでなく、企業や社会からも収集する必要がある。定性的なデータは定量的なデータと同じようにさまざまな過程における決定の際の重要データ(判断材料)となる。そしてマルチ・ステークホルダーの連携を強化することにも繋がる。

 

マルチ・ステークホルダーとの連携強化

技術・ガバナンスなど各分野どれもほぼ全員が「ステークホルダーとの連携強化」と強調していた。
なぜそんなに強化しなければならないのかを数人のスピーカーに聞いてみたところ、一つは先ほどのデータ収集の欠如。もう一つは欧州委員会との連携の弱さ(コミュニケーション不足)と話していた。

海事業界は、陸上(港湾周辺)も含めて海上輸送、漁業、沖合ビジネス(採掘ビジネス)などの多方面にわたるため、いくら各分野ごとのストラテジーが策定されても一筋縄では実行および目標達成には繋がらないのである。そのため例えば優先順位をつけて取り組むなど、実行するにあたってのリードを誰かがやるとか、その優先順位項目を決めるなど具体的な行動計画が必要なようであるが、その辺りが不在のようだ。

いくつかのセッションに参加した際に「俺たちは政府抜きで連携してるよ」なんてホンネを漏らしていた参加者もいた。欧州委員会との連携強化は、一つの大きな課題だと感じた。

 

女性の社会進出の促進

日本だけではなく欧州においても海事業界の女性の登用はまだまだ不十分である。今回の会議のスピーカー約50人のうち17人が女性。個人的にはそんなに少なくない印象だったが、やはり北欧諸国から参加した女性たちからは「もっと女性の登用や学生たちへの海事教育を」というコメントがあった。海事関連の女性技術者は年々増えてきているが、船のキャプテンや港湾現場などで働く女性は少ない。どの国・地域も、そして業界においてもダイバーシティーは持続可能性における一つの大きな要素といえる。

SDGs G14へ向けた取り組み

SDGsのG14は「海の豊かさを守ろう」である。この目標に向けた具体的な取り組みやこれに言及したスピーカーは残念ながらいなかった。唯一、World Ocean CouncilのMrs. Christineが「G14は非常に有力な目標なので、何か指標なようなものを策定したい」と言っていたが、現実未着手だという。また先のマルチ・ステークホルダーとの連携強化はG17の達成にも繋がるので、率先して取り組みたいと話していた。

 

さて2017年は英国南部のPoole(プール)市にて開催予定。他業界と比べてかなり複雑な状況にあるため、EURO2020とSDGsの2030年までの目標達成に向けて具体的な実施項目は何か。そして進捗状況は如何に。できるだけ毎年フォローアップしていきたい。

 

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(上): トゥルク市およびトゥルク港のブース。
(中):一番左:欧州委員会 環境・海事・漁業総局のMr.Karmenu
中央:フィンランド農業・環境大臣のMr. Kimmo
一番右:トゥルク市長のMr. Aleksi
(下):ヘルシンキ港周辺で収集されたゴミでつくったアート作品