2019年、および2010年代を振り返って

毎年恒例の一年の振り返りと翌年への抱負などを書いていきます。今回は、2010年代の終わりということもあり、過去10年間についても簡単に振り返ってみたいと思います。

1, 2019年の振り返り

2019年は、一言で表すなら「変化の兆し」の年でした。2018年の暮れにサステナビリティ支援について「来年以降は少しずつ別のアプローチでも支援していきたいと考えている」と書きました。それを今年一年かけて考えたり試したり体験したりしました。具体的には、二つあります。

一つは、最近の関心ごととして多方面で伝えている「Transition Design(持続可能な社会へ向かうための新しいデザイン研究・実践分野)」です。
参加したセミナーにでこちらの概念について初めて知りました。来年は、ネットをはじめ文献、またセミナーなどがあれば参加したり専門家などに話しを聞いたりして理解を深めて、何か実践分野に取り組めたらチャレンジしたいと考えています。

お読みになっている方で、もしこちらの分野に詳しい方、詳しい文献や活動などがあればご連絡いただけますと幸いです。

もう一つは、「複雑な問題の解決策や創造性を生み出す対話型アプローチ」です。
こちらは2003年のCSR元年から非財務情報開示に携わってきましたが、こうしたベンチマークや調査分析などの手段の評価型のみでは、複雑な問題・課題を解決に導くには非常に限られた範囲でしか携われないこと。物事の核心を捉えてどう解いていくかをもう少し考えていかなければならないほど、複雑な世界になってきたこと。こうした背景から、創造的な解決策を生み出すといわれている対話型アプローチを試みています。

実際には、自主プロジェクトとして運営している「Circular Economy Lab Japan」にて、ワークショップを独自開発して運営実施しました。2019年は1回のみでしたが、2020年は対象者や回数を増やしてこの対話型アプローチを促進していきたいと考えています。

こうした変化の予兆を自分自身で起こしていると、ありがたいことにそこに関わっている人々との出会いがありました。一人と出会うと芋づる式に何人の方との出会いがあり、昨年では予想もしなかった方々との縁に恵まれました。この場を借りてお礼を申し上げます。

いただいたご縁を来年はより深めたりさらに広げたりして、自分自身の成長を育んでいきたいと思います。また今年のご縁は、今まで一緒に仕事をしてきた分野の同僚や上司・先輩後輩とは全く別世界の方々なので、自分の多様性が培われてきた感じがします。

2020年は、主にこの2つの関心分野を深めていくこと、引き続き非財務情報開示の分野での展開を行うことを実行していきたいと思います。

 

フィンランド国内における2019年の出来事は、男子アイスホッケー世界選手権で優勝(2011年以来)、フィンランド代表 EURO2020に初出場、そして世界最年少の女性首相誕生の3つに注目されました。
2020年は、そのEU2020の盛り上がりとマリン首相の手腕に注目が集まると予想されます。

日本の2020年は、オリンピック・イヤーで世界中から注目が集まる年になりますね。

 

2、2010年代の振り返り

まずは非財務情報開示分野における2010年代の動きをざっと振り返ってみたいと思います。

2010年:社会的責任の国際ガイドライン「ISO26000」発行
2011年:「ビジネスと人権の指導原則」発表(UN)
2012年:環境省「環境報告ガイドライン 2012年版」発表(日本)
2013年:IIRC「統合報告フレークワーク」発行、持続可能性国際報告ガイドライン「GRI-G4」発行
2014年:「非財務情報開示の義務指令」採択(EU)
2015年:「SDGs」採択(UN)、「パリ協定」採択、「現代奴隷法」成立(英国)、GPIFがPRIの署名機関となり、ESG投資が拡大、サーキュラーエコノミー 政策 発表(EU)
2016年:持続可能性国際報告ガイドライン「GRIスタンダート」発行
2017年:持続可能な調達ガイドライン「ISO20400」発行
2018年:環境省「環境報告ガイドライン 2018年版」発表(日本)

こうしてみてみると、ガイドライン構築の10年だったことがよくわかります。自身も、微力ながらGRI-G4のピア・レビューを担当したり、最近ではWBCSDが運営するReporting Exchangeにてモデレーターとして日本の動向レポートのレビューを担当したり、プラットフォームづくりをサポートさせてただいたりと、学ばせていただきながらの基盤づくりの10年だったと実感します。

2020年代は、こうしたガイドラインを基により具体的な利用に結びつけ、かつ一般社会により広く浸透するような活動を行っていきたいと考えています。

またガイドラインだけではなく、評価機関からの対応業務も増えている中、本当にやるべきこと、なぜそれをやるのかなどの背景目的も考えながら評価機関へ対応していくことが求められると思います。やみくもに高得点を目指すことになりがちですので、そこはしっかり企業内で議論や社会と対話を行っていく必要があると考えます。

 

フィンランドの2010年代は、不況の脱出にもがいた10年間のように捉えられます。自身が移住した2013年の失業率は、確か8か9%で、その翌年か翌々年には10%台になったのを覚えています。そんな中、2015年にEU政策として提言されたサーキュラーエコノミー を自国の政策の一つとし、ロードマップを掲げました。経済の発展と雇用創出を目的に、さまざまな取り組みが行われました。ベーシックインカムの実証実験もその一つだと言えます。また、同姓法も施行されました。

一方で、EU諸国全体の課題として、移民・難民問題に揺らいだ10年でもあります。テロとの戦いという言葉が、自身が住む街に現実となって表れたのが、2017年8月の出来事でした。

こうした10年間を振り返ると、次の世代に相応しい30代の女性首相が表れても当然だという風潮もどことなく感じます。フィンランドは、若い時から政治との距離が近いため、自分たちの意見が直に政治に届く社会であることを知っています。

2020年代は過去10年間の不況から好転して国が栄えるよう、そして国民は基より、移民・難民に対しても住みやすい社会づくりが求められてくると思います。

 

最後にプライベートの2010年代を振り返ってみますと、結婚、移住、妊娠から育児、そして開業とライフステージが劇的に変化した10年でありました。2020年代は、ここフィンランドでの事業の展開、そしてプライベートでは子どもが成長するとともに家族のあり方や子どもとの関係性にも変化が表れてくるのではないかと思っています。

いずれにせよ、次の10年はもう人生の半ばに身を置くことになります。今まで微力ながらに築いてきたキャリアや経験を少しでも社会へ還元できたら、そして自身の学びも続けながら健康に人生を送ることができたらと思います。また限られた時間とエネルギーの使い方を考えてみたいと思います。

 

今年一年ご愛読および当事業サービスをご利用いただきありがとうございました。引き続き来年もよろしくお願い申し上げます。

それでは良いお年をお迎えくださいませ。

Rauhallista Uutta Vuotta!

 

藤原斗希子   Tokiko Fujiwara-Achren
Towards Future Action – ToFuAc

 

「地域レベルでのカーボンニュートラルの達成に向けたサーキュラーエコノミーの取り組み」フィンランド・トゥルク市の事例

ヘッダー写真は、Kakolanmäki地域。「>」の形とその周りの建物が旧収容所。その右下は新築の住宅街。廃水処理プラントは旧収容所の左側に位置する(写真外) 出展元:Pohjola Rakennus Oy (サイトは記事下)

 

2019年12月2日からCOP25がマドリードで開催されました。持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会「ICLEI」(イクレイ)のセッションにて、フィンランドの古都トゥルク市は、地域のサーキュラーエコノミー の実現に向けた取り組みを紹介しました。今回はその内容をお伝えします。

トゥルク市は、市が800周年を迎える2029年までにカーボン・ニュートラルを、2040年までにはゼロエミッションとゼロウェストを目指しています。
その実践として、具体的な3つの取り組みを紹介します。

1, バリューチェーン全体で資源を循環させる

製品およびインフラの設計における材料の再循環や効率性の構築、または資源のプールやカスケードに基づくビジネスモデルは、エネルギーや二酸化炭素排出量の削減だけではなく新しい生産ニーズをも削減するサーキュラーエコノミー そのものです。

トゥルクの実践その1:

トゥルク市は地域における民間セクターのサーキュラーエコノミー ・イニシアチブを支援してきました。 その一例が、隣接するライシオ市のSmart Chemistry Park(SCP)です。 SCPは、化学業界14社により相乗効果の特定オンサイトプラットフォームを提供する「産業共生プロジェクト」です。 企業は共通施設の費用を分担し、化学物質の安全性と特許工学に関する専門知識を利用できます。

2, 新しいクリーンなエネルギー源

有機廃棄物および廃水からのエネルギー回収は、利用率の低い廃棄物資源を通じてエネルギーを生成するためのコスト効率の高い方法です。

トゥルクの実践その2:

Kakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラントは、トゥルクおよび13の近隣自治体からの廃水を収集して処理します。 2台のヒートポンプが廃熱を利用して、15,000世帯の地域冷暖房を生産しています。植物からのスラッジはバイオガス生産に使用され、地元の電気、暖房、輸送のニーズにカーボンニュートラルソースを介して供給されます。これらは、消費エネルギーの10倍のエネルギーを生成します。

Kakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラント全容               Copyright©️今と未来のあいだで

3, 二酸化炭素吸収源の保護

再生資源を活用し、生態系を保護することを目的としたサーキュラーエコノミー は、海洋、森林、土壌などの天然の炭素吸収源を保護する効果的なツールです。 たとえば、堆肥化の実践を通じて栄養を循環させて土壌に戻すことで、土壌にできる限り多くの炭素が保持されます。

トゥルクの実践その3:

Kakolanmäkiの下水処理場を設置する前は、14の市町村によって下水が個別に収集されていたため、栄養素の回収は最大化されていませんでした。 その結果、トゥルク海域はリン、窒素、および浮遊固形物であることが特徴づけられました。 しかし1つの場所にすべての都市下水処理施設を集中化することで、回収ポイントが少なくなりました。また栄養化の回復により、トゥルク海域のリンが83%減少し、バルト海の水質にプラスの効果がありました。

 

その他の現在の気候変動対策を3つご紹介します。

【カーボンニュートラルエネルギーシステム】
トゥルク地域で使用される熱、冷気、蒸気、電気は、遅くとも2029年までにカーボンニュートラルな方法で生産されます。スマートソリューションとエネルギー効率は、トゥルク地域のエネルギーシステムの開発に活用されます。

【低炭素モビリティ】
公共交通機関とサイクリングインフラストラクチャを開発しています。また、電動モビリティ、サービスソリューションとしてのモビリティ、および低排出物流にも投資しています。

【持続可能な都市構造】
ゾーニング、土地利用、交通計画、および関連する開発プロジェクトを通じて、持続可能性に資する都市構造を運営しています。
現在、街の中心地にあるマーケット広場の外観とインフラを開発中で、2021年に完成予定です。

地域レベルでの気候行動(Climate Action)に向けたコラボレーション
トゥルク市とその周辺地域には、地域の気候変動対策と持続可能な資源管理に貢献する、サーキュラーエコノミー のエコシステムと先駆的なイニシアチブがあります。 市はこれらの関係者と協力してカーボンニュートラルに向けたロードマップを作成したいと考えています。
Circular Turkuプロジェクトは、フィンランドのイノベーション基金Sitraの支援を受けて、地方自治体が包括的かつ協調的な方法でサーキュラーエコノミー を運用するための複製可能なツールを設計することを目指しています。 これらの学習は、都市、専門家、企業、およびその他の関連する利害関係者を結び付けて都市型サーキュラーエコノミー の移行を促進する、ICLEIのグローバルなグリーン循環都市連合を通じて共有されます。

ここで、地域でサーキュラーエコノミー を実践していくための、いくつかのヒントをご紹介します。

分野横断的で循環性のある手段としての地域コラボレーション

  • サーキュラーエコノミー の実践は、通常サイロ化されているセクターをつなげていく必要があります。 これらの領域は、さまざまな部門、自治体、または政府レベルの管轄下にある場合があります。 地域連携により、個々の自治体がサーキュラーエコノミー ・イニシアチブでセクターをまとめる能力が高まります。
  • 地域では、炭素集約型のカテゴリでの材料使用を効果的に管理するための適切なスケールを提供します(建設資材、化学薬品、繊維など)。 循環的で地域的なアプローチを取ることにより、費用対効果の高い方法で材料の使用を最小限に抑えることができます。
  • カコランマキ廃水処理プラントなどの循環インフラストラクチャは、長期的なコスト削減につながりますが、多くの場合、従来のプロジェクトよりも高い先行投資となります。 そのため異なる自治体間のコラボレーションにより、都市および地区はリソースをプールして前払い費用を賄うことができます。
  • サーキュラーエコノミープロジェクトは、従来の一直線型システムの境界外で考え、革新する必要があります。 地域内の大学、企業、コミュニティイニシアチブなどの多様なアクターの集合体は、異なるアクター間の相乗効果の機会を提供します(例えば、産業共生のため、など)。

 

取り組みのまとめ

素材や材料をより循環的に使用することは、地域レベルの気候政策のコアとなります。
サーキュラーエコノミー を実現するためには、再生可能エネルギーの供給、輸送と熱の排出削減、エネルギー効率とともに取り入れるべきです。
サーキュラーエコノミー は、トゥルクとフィンランド南西部周辺の主要な優先事項の1つであり、炭素排出量を削減するイニシアチブがすでに実施されています。 これらのイニシアチブは、カーボンニュートラルなサーキュラーエコノミー の設計において地域協力が果たす極めて重要な役割を示しています。

 

ここまで、トゥルク市の市長であるMinna Arve(ミンナ・アルヴュ)氏により紹介されました。

同氏は

「気候変動の課題は全世界に関係しており、解決策を見つけるには知恵と良い事例を共有することが重要である」

と述べています。

紹介の中にあったKakolanmäki(カコランマキ)廃水処理プラント周辺について少し補足説明しますと、実はここに昔の収容所の建物が残されていました(ヘッダー写真)。それを改築しスパやホテル、カフェ、住宅地にすることで古い建物および収容所という機能を改め、その地域一体に新しい価値を創出しました。

こうした現在あるすべての資源を使って環境負荷を減らしつつ新しいモノ・コトから価値を作り出すのがサーキュラーエコノミー の特徴と言えるでしょう。

 

 

出展元:

New policy brief released by ICLEI
https://talkofthecities.iclei.org/new-policy-brief-released-towards-carbon-neutral-circular-economies-at-the-regional-level/

Kakolanmäki(カコランマキ)
https://www.kakola.fi/ (フィンランド語)

Pohjola Rakennus Oy(ヘッダー画像)

https://www.sttinfo.fi/tiedote/pohjola-rakennus-oy-lansi-suomi-kehittaa-kakolan-aluetta-rakentamalla-satoja-koteja?publisherId=50563861&releaseId=50563878