テクノロジーで社会課題を解決するフィンランドのスタートアップ

昨日、安倍首相がフィンランドを訪れた際に「日本はフィンランドに親近感がある。なぜなら日本国民はムーミンやサンタクロースが好きだから」なんていうニュース記事がありました。

ですが最近はフィンランドといえばスタートアップ”SLUSH”という人もいるほど、起業文化が醸成されています。

先日の世界サーキュラーエコノミーフォーラムでは、「資源循環」をビジネスとしている企業の表彰があり、受賞企業は偶然にもスタートアップビジネスの企業でした。今回はその企業をご紹介したいと思います。

 

食品ロスを抑えるためにレストランと消費者をマッチング
ーResQ社

ブッフェスタイルの多いフィンランドのレストラン。最近では伝統料理に加えて、中華や寿司ブッフェも増えてきています。しかしブッフェだと大量に食品が余ってしまいますよね。そこで食品ロスを抑えるために、カフェやレストランと消費者をつなぐマッチングサービス”ResQ”が誕生しました。

今日のランチが余りそうだな、というお店がアプリに登録すると、その近くにいるユーザーへ通知が届きます。欲しいユーザーは、電子決済で前払いして、同日の指定時刻までに取りに行くという至ってシンプルな仕組み。

 

食べ物を捨てるのがもったいない
ーテクノロジーで社会課題を解決

ドイツの「mealsaver」とフィンランドの「ResQ」社の合併ビジネスでベルリンを拠点とするスタートアップ起業。食べ物を捨てるのがもったない。まだ食べられるのに食品管理上、早めに捨ててしまう現状から食品ロスが急増。そんな問題をテクノロジーで解決したい、という想いからビジネスが始まりました。

青年期をタンザニアと南アフリカで過ごしたResQ社のCEOであるTuure Parkkinen氏は、「純粋に感情的な理由で会社を設立したくはなかった。しかし、この食品廃棄物の問題は明らかで、人々の生活をより良くするために具体的な行動を起こしたかった」とスタートアップ設立の背景を述べています。

現在フィンランド国内には首都圏を中心とするおよそ200店舗がResQに登録。

実際に先述のフォーラムの帰りに中華レストランのランチロスを買ってみたところ、特に味が落ちていることもなく、夕食の一品として美味しくいただきました。

フィンランドのNatural Resources Instituteによると、フィンランド国内のレストランでは調理した食糧の5分の一が廃棄されて、毎年約8000万キロの食品ロスが発生しているといいます。

そのような状況から、フィンランドのSDGsやサーキュラーエコノミー(CE)の目標には、食品ロスの削減が含まれています。

このResQ社は決してSDGsやCEの目標に準拠したわけではなく、単純に「人々の生活をより良くしたかった」という理念からビジネスが始まりました。

スタートアップ文化が根付いたフィンランド。これからはサステナビリティとスタートアップが組み合わされ、社会課題解決のために一層イノベーションが加速することは間違いないでしょう。

 

加筆修正:2017年7月12日

 

 

 

 

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フィンランドのサーキュラー・エコノミーのロードマップ

 

フィンランドの2017年3月期の失業率は9.6%でおよそ26万人が失業中。EU先進諸国の中でトップの経済不況国。そんな状況から打破するべく、今サーキュラー・エコノミー(CE)に力点をおき、フィンランド経済そのものに変革を起こす動きが出てきています。

CEへ移行することにより、2030年までにおよそ75,000人の雇用が創出されるという推計があります。もちろん世界の気候変動対策や再生可能エネルギー革命へ向けた取り組みではありますが、フィンランドの強みの一つである「イノベーション」を用いて、IoT、Fintech、AR/VRなどのテクノロジーでCEを実現していくロードマップ(2016-2025)が策定されました。

以下、概要をお伝えします。

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CEの目標

フィンランドは、過去25年にわたる持続可能な開発を構築してきた、世界初の持続可能な開発に関する国家委員会を設立している。そこでは、幅広いステークホルーダのメンバーシップで構成され、そのメンバーの合意は今でも受け継がれている。このステークホルダーの参加により、国家の指導的役割と企業と異なるステークホルダー間の協力強化、輸出成長の追求、さらには国内市場のテストプラットフォームとして使用することを視野に入れて策定された。

都市化、気候変動、人口増加、高齢化などの世界的な課題から生じる機会に基づいてターゲットを設定。さらにフィンランドの強みとするIoT、Fintechなどのテクノロジーの専門知識と、小国家ならではのさまざまな分野との垣根を超えたコラボレーションを強化する潜在能力を基本としている。

そして2025年までには、以下を実行することでCEにおける世界的なリーダーになるとしている。

企業と輸出の成長を目指したCEの包括的な解決策を創造
国内市場の機能性を確保
迅速な行動と具体的な試行、CEへのメインストリーム化

 

2025年までの達成項目

フィンランドの競争力を強化し、新しい雇用と持続的な成長を創造。これにより、フィンランドの経済には少なくとも30億ユーロの付加価値が生まれ、「温暖化効果ガス排出と自然資源の消費の増加」と「幸福と経済成長」について切り離して考えることに貢献できる。

以下、経済、環境、社会分野の視点から具体的な達成項目をあげる。

経済分野:フィンランド経済の新たな基盤となる
・CEによって企業の競争力を向上。売り上げ高や新技術のイノベーションをもたらす
・輸出上の利点となり、国際化を望む企業の数を増加
・資金調達モデルの改革によりCEを支え、公的調達や共同組合などの援助を利用
・環境改善によって新たな成長とビジネスの創出

 

環境分野:資源枯渇に対する解決のモデル国として
・資源効率の大幅向上
・マテリアルサイクルをより効率的にし、再生可能な天然資源が再生不可能な資源に取って代わり、カーボン・ニュートラルで廃棄物のない社会へと移行
・CEはフィンランドの生態学的な持続可能性を向上
・CO2排出量や汚染負荷などの環境影響をより抑制

 

社会分野:適応者から先駆者へ
・社会的行動のための政策手段を決定する際に、CEが考慮されるようになる。公共部門においては、幅広い方法でCEに参加する。官庁、民間、第三セクター間の官民パートナーシップが重要な役割を果たす
・フィンランドに幸福をもたらし、サービスと共有経済(シェアリング・エコノミー)への移行を促進
・CEの認識は向上し、国内市場の需要回復と、CEの製品やサービスの注目が集まる
・消費者はサービスやリサイクルの共有など、新しい消費モデルを取り入れる

 

主要4分野にフォーカス

以上のことを踏まえてCEへ移行するためには、システムの変化が必要である。異なる組織や産業間において、新しい運用方法や考え方を変える必要がある。それには最も重要な分野に焦点を当てる必要があり、まずは4つの分野を選択。4分野に加えてそれらを体系的に変化させるための国際的な共同行動を、5つ目の分野として設定した。

1、持続可能な食料システム
より持続的で総体的なシステム開発に関与する。

2、森林を基本としたループ
森林産業は昔からフィンランドの主要産業。CEにおいても強みであることは変わらず、最善の専門分野と認識。

3、テクニカル(技術的)ループ
ここでは製品のライフサイクルの延長に焦点。フィンランドの強みであるIoTにより、ループ全体を長くして物質価値を最大化することで、製品のインテリジェンスが高まり、そこからサービスが生まれる可能性がある。

 

4、輸送交通と物流ループ
この分野は相乗効果が最も高い。物流能力の利用レベルの向上、化石燃料の再生可能または代替エネルギーへの転換、輸送ルートの最適化を図るためのソリューションなど。デジタル化では、旅客輸送におけるスマート輸送(Maas = Mobility as a Sercive、サービスとしてのモビリティ)へ移行し、より資源効率を高める。

 

5、国際的な共同行動
以上4分野を実行しそれぞれを達成するためには、政府、企業、大学、研究機関、消費者、市民などと体系的な変化が必要。それにはコミュニケーションと多様な相互作用が重要である。

 

ロードマップのアクション

以下3つの方法によって促進される。

・政策アクション:CEへ円滑に移行するためのコスト効率やその他の管理上の前提条件を合理化、調整、改善する方法などを立法上で実施

・主要プロジェクト:上記4分野のプロジェクトを実施

・パイロットプロジェクト:既存の技術革新とベストプラクティスを普及

 

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いかがでしたでしょうか。
所々に過去記事とリンクした内容がありますので、適宜ご参照ください。

日本と比べて人口およそ20分の一の国家の生き残りをかけたサーキュラーエコノミー・ロードマップ。長引く不況から打破するための「雇用政策」でもあり、気候変動などの「環境対策」でもあり、現在改革中の社会福祉制度に対する「社会政策」でもあり、そして今年独立から100年を迎えた小国家としてのこれからの「サバイバル政策」でもあります。

フィンランドの特徴ともいえる「国際競争力」「イノベーション」「国家の安定度」「透明性」などをどう活かしていくのか。

既存の研究分野でもあるバイオテクノロジー、工業デザイン、健康とセキュリティにおけるICT、ワイヤレス・テクノロジーなどあらゆる分野においてイノベーションが起こせる可能性を秘めている国、フィンランド。

過去ノキアのような栄光を再び見ることはできるのでしょうか。サーキュラーエコノミーのリーダーを目指して、まずは6月5日~7日にヘルシンキで開催される「世界サーキュラー・エコノミー・フォーラム2017」のホスト国としての存在をアピールすることでしょう。

このフォーラムの様子は後日お伝えする予定です。