感染症と共に生きる時代へ〜その2「COVID-19後の世界における新たな変化」〜

フィンランドのシンクタンク”Demos Helsinki”にて先日「COVID-19後の世界における新たな変化」と題してWebinarが開催された。そこでの議論および、フィンランドをはじめ世界におけるこれからのゲームチェンジを考える備忘録として照会する。

 

この日の議題は、以下4つであった。

  1. 危機は常に社会の変化を加速させる
  2. COVID-19後の7つの新たな変化
  3. 今日わたしたちにできることは?
  4. いま共有する4つのポイント

2と4に注力して紹介する。

 

COVID-19後の7つの新たな変化

「企業」「政府」「市民」の3つのセクターの関連性の切り口として、新たな変化を捉えていた。

7つの変化とは

  1. Steering:主導
  2. Platform Governance : プラットフォームガバナンス
  3. Global systems : 国際的なシステム
  4. Governance:ガバナンス(統治)
  5. Universalism:ユーニバーサリズム(普遍主義)
  6. Work:労働
  7. Consumption:消費

現状は

 

1: 主導
経済成長を目的とした政府主導である

2: プラットフォームガバナンス
今後数年間のテーマである

3: グローバルシステム
複雑な経済システムである

4: ガバナンス
アプローチと出現の分岐ガバナンスである

5: 普遍主義
政策成果を提供するための新しい方法への需要が高まる

6: 労働
失業率は急速に上昇し続ける

7: 消費
消費パターンが根本的に変わる

 

 

これから数年後には

 

1: 主導
運営(主導)と実行可能(実践)主導

2: プラットフォームガバナンス
公益プラットフォームと私益プラットフォーム

3: グローバルシステム
国際的な生産ネットワークとローカルな生産ネットワーク

4: ガバナンス
変革的と安定的な統治

5: 普遍主義
団結・結束型と広範囲にわたるサービス提供

6: 労働
生涯学習と構造的な失業

7: 消費
eコマースと価値に基づく消費

 

いま共有する4つのポイント

まだまだ収束の見通しが立たない現状で一旦世界と共有することは、

  1. 未来を予測する
    将来の見通しを明確にすることから一旦離れて、常に仮説をテストして再評価する
  2. 新しい役割を再考する
    新しいことは、新しいプレイヤーをイメージすることから始まり、最終的には権力の再分配につながる
  3. 能力を高める
    変化を先導するには新しい能力が必要であり、これは個人と組織の両方に当てはまる
  4. レジリエンスを構築する
    弾力性・回復力のある運用モデルは、将来危機が迫ってきた時に現在よりも優れた対応ができる

 

セミナー中に参加者へいくつか質問があり、その内容と多数の回答があった項目を照会する。

Q1. 現在の危機によって最も増幅される傾向はどんなことでしょうか?

  • デジタリゼーション
  • ローカリズム(地域主義)
  • レジリエンス(回復・弾力性)
  • テレワーク・リモートワーク
  • 不平等
  • メンタルヘルスへの障害
  • 分断

Q2. 政府とテクノロジー企業の関係はどのように変化しますか?(賛同者数)

  • ハイテク大手企業が成長する (およそ80人)
  • 政府とテクノロジー企業の間の協力が深まる (およそ170人)
  • 政府はハイテク企業の経済活動を制限するように働きかける (およそ60人)

Q3. 個人消費においてはどのような変化があると思いますか?

  • 航空旅行の削減
  • 消費の削減・生産の削減・本質的な購買へ
  • 地域のサプライチェーンやビジネスを支援
  • DIY文化の増加

Q4. 根本的な福祉制度の改革はどのように変化すると思いますか?(賛同者数は特に開示されず、やや論点として持ち越した)

  • 危機を乗り越えるための瞬間的な支援
  • 永続的な経済援助としてユニバーサル・ベーシック・インカムを導入
  • 成長ではなく、人間界と自然界に焦点をあてた経済システムへシフト

Q5. 今日からどんなことをやりますか?

  • この状況、もしくはこれから来るだろう新しい世界へフィットさせるために、自分のルールを再考する
  • 常にポジティブでいる
  • サステナブルな生活として、地域のビジネスや食を支援し続ける
  • 次世代と一緒に学ぶ

 

4つのポイントの一つとしてあがっている「未来を予測する」は、決して目標計画をつくることではない。

いま自分がどんな社会をつくりたいのか、どんな社会に住みたいのか、どんな社会で生きていきたいのかを想像・創造しながら常に実装し改善することの繰り返しが、これからの社会には必要である。そこには新しいルールや役割を設定し、かつそれも改善を繰り返すことでレジリエンスを構築していくことになるのだろう。
わたしたちが心底大切なものを守りながら。

資料元:DemosHelsinkiのWebinarより

2019年、および2010年代を振り返って

毎年恒例の一年の振り返りと翌年への抱負などを書いていきます。今回は、2010年代の終わりということもあり、過去10年間についても簡単に振り返ってみたいと思います。

1, 2019年の振り返り

2019年は、一言で表すなら「変化の兆し」の年でした。2018年の暮れにサステナビリティ支援について「来年以降は少しずつ別のアプローチでも支援していきたいと考えている」と書きました。それを今年一年かけて考えたり試したり体験したりしました。具体的には、二つあります。

一つは、最近の関心ごととして多方面で伝えている「Transition Design(持続可能な社会へ向かうための新しいデザイン研究・実践分野)」です。
参加したセミナーにでこちらの概念について初めて知りました。来年は、ネットをはじめ文献、またセミナーなどがあれば参加したり専門家などに話しを聞いたりして理解を深めて、何か実践分野に取り組めたらチャレンジしたいと考えています。

お読みになっている方で、もしこちらの分野に詳しい方、詳しい文献や活動などがあればご連絡いただけますと幸いです。

もう一つは、「複雑な問題の解決策や創造性を生み出す対話型アプローチ」です。
こちらは2003年のCSR元年から非財務情報開示に携わってきましたが、こうしたベンチマークや調査分析などの手段の評価型のみでは、複雑な問題・課題を解決に導くには非常に限られた範囲でしか携われないこと。物事の核心を捉えてどう解いていくかをもう少し考えていかなければならないほど、複雑な世界になってきたこと。こうした背景から、創造的な解決策を生み出すといわれている対話型アプローチを試みています。

実際には、自主プロジェクトとして運営している「Circular Economy Lab Japan」にて、ワークショップを独自開発して運営実施しました。2019年は1回のみでしたが、2020年は対象者や回数を増やしてこの対話型アプローチを促進していきたいと考えています。

こうした変化の予兆を自分自身で起こしていると、ありがたいことにそこに関わっている人々との出会いがありました。一人と出会うと芋づる式に何人の方との出会いがあり、昨年では予想もしなかった方々との縁に恵まれました。この場を借りてお礼を申し上げます。

いただいたご縁を来年はより深めたりさらに広げたりして、自分自身の成長を育んでいきたいと思います。また今年のご縁は、今まで一緒に仕事をしてきた分野の同僚や上司・先輩後輩とは全く別世界の方々なので、自分の多様性が培われてきた感じがします。

2020年は、主にこの2つの関心分野を深めていくこと、引き続き非財務情報開示の分野での展開を行うことを実行していきたいと思います。

 

フィンランド国内における2019年の出来事は、男子アイスホッケー世界選手権で優勝(2011年以来)、フィンランド代表 EURO2020に初出場、そして世界最年少の女性首相誕生の3つに注目されました。
2020年は、そのEU2020の盛り上がりとマリン首相の手腕に注目が集まると予想されます。

日本の2020年は、オリンピック・イヤーで世界中から注目が集まる年になりますね。

 

2、2010年代の振り返り

まずは非財務情報開示分野における2010年代の動きをざっと振り返ってみたいと思います。

2010年:社会的責任の国際ガイドライン「ISO26000」発行
2011年:「ビジネスと人権の指導原則」発表(UN)
2012年:環境省「環境報告ガイドライン 2012年版」発表(日本)
2013年:IIRC「統合報告フレークワーク」発行、持続可能性国際報告ガイドライン「GRI-G4」発行
2014年:「非財務情報開示の義務指令」採択(EU)
2015年:「SDGs」採択(UN)、「パリ協定」採択、「現代奴隷法」成立(英国)、GPIFがPRIの署名機関となり、ESG投資が拡大、サーキュラーエコノミー 政策 発表(EU)
2016年:持続可能性国際報告ガイドライン「GRIスタンダート」発行
2017年:持続可能な調達ガイドライン「ISO20400」発行
2018年:環境省「環境報告ガイドライン 2018年版」発表(日本)

こうしてみてみると、ガイドライン構築の10年だったことがよくわかります。自身も、微力ながらGRI-G4のピア・レビューを担当したり、最近ではWBCSDが運営するReporting Exchangeにてモデレーターとして日本の動向レポートのレビューを担当したり、プラットフォームづくりをサポートさせてただいたりと、学ばせていただきながらの基盤づくりの10年だったと実感します。

2020年代は、こうしたガイドラインを基により具体的な利用に結びつけ、かつ一般社会により広く浸透するような活動を行っていきたいと考えています。

またガイドラインだけではなく、評価機関からの対応業務も増えている中、本当にやるべきこと、なぜそれをやるのかなどの背景目的も考えながら評価機関へ対応していくことが求められると思います。やみくもに高得点を目指すことになりがちですので、そこはしっかり企業内で議論や社会と対話を行っていく必要があると考えます。

 

フィンランドの2010年代は、不況の脱出にもがいた10年間のように捉えられます。自身が移住した2013年の失業率は、確か8か9%で、その翌年か翌々年には10%台になったのを覚えています。そんな中、2015年にEU政策として提言されたサーキュラーエコノミー を自国の政策の一つとし、ロードマップを掲げました。経済の発展と雇用創出を目的に、さまざまな取り組みが行われました。ベーシックインカムの実証実験もその一つだと言えます。また、同姓法も施行されました。

一方で、EU諸国全体の課題として、移民・難民問題に揺らいだ10年でもあります。テロとの戦いという言葉が、自身が住む街に現実となって表れたのが、2017年8月の出来事でした。

こうした10年間を振り返ると、次の世代に相応しい30代の女性首相が表れても当然だという風潮もどことなく感じます。フィンランドは、若い時から政治との距離が近いため、自分たちの意見が直に政治に届く社会であることを知っています。

2020年代は過去10年間の不況から好転して国が栄えるよう、そして国民は基より、移民・難民に対しても住みやすい社会づくりが求められてくると思います。

 

最後にプライベートの2010年代を振り返ってみますと、結婚、移住、妊娠から育児、そして開業とライフステージが劇的に変化した10年でありました。2020年代は、ここフィンランドでの事業の展開、そしてプライベートでは子どもが成長するとともに家族のあり方や子どもとの関係性にも変化が表れてくるのではないかと思っています。

いずれにせよ、次の10年はもう人生の半ばに身を置くことになります。今まで微力ながらに築いてきたキャリアや経験を少しでも社会へ還元できたら、そして自身の学びも続けながら健康に人生を送ることができたらと思います。また限られた時間とエネルギーの使い方を考えてみたいと思います。

 

今年一年ご愛読および当事業サービスをご利用いただきありがとうございました。引き続き来年もよろしくお願い申し上げます。

それでは良いお年をお迎えくださいませ。

Rauhallista Uutta Vuotta!

 

藤原斗希子   Tokiko Fujiwara-Achren
Towards Future Action – ToFuAc