さようなら2017年

昨年に引き続き、今年2017年を振り返ってみたいと思います。

ざっと「サステナビリティ関連」「フィンランド全般」そして「個人」を振り返ってみましょう。

1、サステナビリティ関連

1-1 SDGs
SDGs採択から2年が経ちましたが、今年は具体的にどのように取り組んでいくかを企業だけではなく、国や地方自治体までもが模索していたような印象があります。個人の目からみるとフィンランドや欧州諸国は、国がなんと言うが言うまいが一企業または自治体単位でSDGs目標を立てているところが多く見受けられます。

先日デンマークのビール会社カールスバーグ社のサステナビリティ担当者と話しをする機会があったのですが、SDGsについて国の政策や行動計画があってそれに企業が準拠しているのか、と聞いてみたところ、国の政策なんてあったかな?特に国の動きは意識せず、我々の事業活動において重要な取り組みを定めているだけだよ、との返答がありました。

フィンランドに至っては、国のSDGs推進策はあるものの、企業がそれに追随するような動きは見られず、議論した結果、追随しているかのように見える部分もあるかもしれませんが、やはり試行錯誤しながら自主的な取り組みを行っている状況です。

翻って日本はいかがでしょうか?企業のレポーティングを日々観ている立場からすると、CSRやサステナビリティレポートにSDGsのアイコンをマテリアリティと紐付けた段階の企業が多く見受けられます。認識を高めるために最初の出発点はこれで良いのかもしれませんが、ではいざ着手しようとしたときに、アイコン紐付けだけではどこから手をつけてよいかわかりませんね。

アイコンペタペタ作業から、来年はSDGs目標達成に向けた具体的な行動計画の策定を期待しています。

1-2 ESG
SDGsと並んで ESG投資の認知度も高まってきたと思います。ESG投資は株主や投資家サイドからの影響や要求が高くなってきていますので、財務分野の人たちにとってはESGの重要性を認識した年だったと思います。

これまた先日、評価機関のRobecoSam社のセミナーを聴講する機会がありましたが、サステナブルな投資を促進させるためには、やはり根拠あるマテリアリティをしっかりと打ち出し、統合的に事業活動および情報開示することが求められると話していました。

1-3 GRI
続いてGRIですが、いよいよ来年2018年7月からスタンダード・ガイドラインが有効となります。次のレポートではスタンダードを参考または準拠する企業も出てくるでしょう(7月からなので、それ以前発行だとG4でも良いのですが)。

H&MやGM社などは、すでにスタンダードを準拠した開示を行っています。そうした先進企業の事例をみながら、自社の情報開示を考える、という企業も多く見受けられます。

情報開示をどう扱うか、社内への説得をどうするか、他部門とのコミュニケーションはどう図るかなど各企業独自の課題に向き合い、レポーティングを通じて本来の取り組みを加速させていってほしいと思います。

モジュール化されたスタンダードは早速、2017年の秋にGRI303と403の改訂に着手しており、2018年の第二四半期には発行される予定です。続いて新たに加わる予定の税と人権の項目は、第一四半期に着手する予定。またGRI306も第一四半期に、GRI201-203は第二四半期に改訂の着手が行われる予定だそうです。

1-4  欧州の非財務情報開示のガイドライン
ここ欧州では非財務情報開示に関するガイドラインが採択されました。2017年の事業活動報告として、2018年にこのガイドラインを適用したレポートを発行することが義務付けられています。対象企業は、500人以上の従業員で構成される組織で、環境、社会、雇用、人権、腐敗防止などに関する取り組みの報告が義務付けられました。

先日、EU28加盟国の法律の主要要素および非財務に関する動向をまとめたレポートが発行されたようなので、近日読んでブログで紹介したいと思います。

このほかには、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による最終提言が公表され、企業が財務諸表の一部として気候変動のリスクと機会を評価して開示することが求められてきます。COP21によりGHG排出を大幅に削減していくことが必要であり、低炭素経済への移行により多くの企業が気候変動によるリスクと機会をもたらすことが予想されるため、このような最終提言が発表されました。

 

 

2、フィンランド全般

今年は共和国としての独立100周年を迎えました。昨年あたりから100周年記念プロジェクトが行われ、独立日である12月6日には、その集大成ともいえるイベントが各地で行われました。お城や観光スポットをナショナルカラーの青色にライトアップしたり、軍隊パレードが行われたり、アーチストによるさまざまなイベントがありました。

日本でも有名な冬戦争など数々の戦火を経験した小国家フィンランド共和国。常に大国ロシアとの脅威が背中合わせにある中で、今ではそのロシアを抜いて先進国の一国となり、持続可能性や社会性の観点から高い評価を受けるまでの国となりました。

過去100年の歴史を踏まえ、これからの50年、そして100年と何よりも国として平和に存続することを切に願うばかりです。

そんな年にふさわしかったのか、フィンランドのサステナビリティ分野でも大きな動きがありました。

2-1 サーキュラー・エコノミーの先駆者となる
長引く不況を脱出する一つの手段としての、サーキュラー・エコノミー(CE)の促進。世界サーキュラー・エコノミー・フォーラムを開催し、国としてのロードマップを発表。12月には、ロードマップのフォローアップとして行動計画が発表されました。

公共調達、プラットフォームの策定、新製品やサービスの支援などを中心に、国民への理解浸透および教育、そして国際的なリーダーとしての役割を掲げています。

CEのセミナーなども数多く開催され、いくつか参加したうち、先進事例として必ず日本のリサイクル推進法や地方自治体の取り組みがありました。リサイクルに関しては日本は先進国だと思いますが、さて包括的な概念や統合的な取り組みは実施されているでしょうか。

欧州またはフィンランドと日本における強みや弱みを共有して、CEを世界で促進させていくことは、SDGsの目標達成の一つに繋がると思います。来年はこの観点からここ現地の取り組みをみていきたいと思います。

2-2 北極圏評議会の議長国を務める
フィンランドは2017年から2年間、北極圏評議会の議長国を務めることになりました。これは、北極圏評議会のメンバーが持ち回りで2年間の議長国を担当することになっており、ちょうど100周年にあたる今年に議長国の担当が回ってきました。

国土の三分の一が北極圏内に入るフィンランドは、北極圏の環境保護、気象に関する技術協力、北極圏への通信接続や北極圏に関する教育、そしてSDGsの枠組みとの連携を重点項目として、2019年までの戦略を発表しています。

この北極圏評議会に非加盟国のオブザーバーとして参加している日本の動向も注視されています。加盟国のみならず非加盟国が貢献できることも数多いことを、評議会の事務局長から話しを伺っています。

2019年までの期間、フィンランドの北極圏への取り組みがどう進展するのか。日本との連携なども含めて見ていきたいと思います。

ちなみに2019年は、日芬外交樹立100周年を迎えます。その際には北極圏以外の日本との連携事業なども紹介していきたいと思います。

2-3 トゥルク市で発生した殺傷事件
8月に起きたトゥルク市での殺傷事件。2人の死傷者と8人の負傷者を出し、容疑者は現場にて逮捕。容疑者はモロッコ国籍の男性で、難民申請中の最中にこの事件を起こしたと報道されていました。

難民による殺傷事件は、フィンランドに限らず昨今欧州諸国で発生しており、難民受け入れに対する風当たりは一層強くなってきています。

フィンランド国内では、移民・難民反対デモがこの事件後に頻繁に行われていました。現在は鎮火していますが、フィンランド警察は昨年よりも監視を強化しています。

根本である難民を作り出している現在の世界をもう一度よく考え、なぜ難民が発生するのか、そして難民を受け入れる体制を各国が考え改善していく必要性が一層高まっていると思います。

2018年にフィンランドは、シリア難民とザンビアからのコンゴ難民を合わせて750人ほど受け入れると発表しています。この人数は他の北欧諸国よりも少ないと言われていますが、数の問題ではなく、受け入れ体制、そして難民がこのフィンランド社会に1日も早く溶け込めるような対策や工夫が必要ではないかと思います。

国が移民や難民を受け入れることの重要性、そしてその人たちが社会にどう溶け込んでいくのか、移民の一人としてその行く末から目が離せません。

 

3、個人として一年を振り返って

さて今年は在宅保育から解放され、一気に時間ができました。仕事をする時間もそうですが、なんといっても自分への投資時間ができたことが非常に嬉しかったです。

その甲斐あってか、公私共にフィンランド国内はもちろんのこと、周辺国とのビジネス、海外に住む日本人の方々、そして日本国内にいる日本人の方々との出会いがありました。

昨年もそうですが、やはり人との交流なしには仕事もプライベートも成り立ちません。移住してからそのことを意識的に心がけて出かけたりコンタクトを取るようにしています。

育児から完全に解放されたわけではありませんが、育児の初期段階が終わり、これからは生産性を高めて仕事と育児の両立、家族との時間を取りながら、健康第一で過ごせたらと思います。

来年もまた細々と北の果てからサステナビリティ関連の情報を発信していきたいと思います。

今年一年ご愛読をありがとうございました。
それでは良いお年をお迎えくださいませ。

Rauhallista Uutta Vuotta!

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フィンランドのサーキュラー・エコノミーのロードマップ

 

フィンランドの2017年3月期の失業率は9.6%でおよそ26万人が失業中。EU先進諸国の中でトップの経済不況国。そんな状況から打破するべく、今サーキュラー・エコノミー(CE)に力点をおき、フィンランド経済そのものに変革を起こす動きが出てきています。

CEへ移行することにより、2030年までにおよそ75,000人の雇用が創出されるという推計があります。もちろん世界の気候変動対策や再生可能エネルギー革命へ向けた取り組みではありますが、フィンランドの強みの一つである「イノベーション」を用いて、IoT、Fintech、AR/VRなどのテクノロジーでCEを実現していくロードマップ(2016-2025)が策定されました。

以下、概要をお伝えします。

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CEの目標

フィンランドは、過去25年にわたる持続可能な開発を構築してきた、世界初の持続可能な開発に関する国家委員会を設立している。そこでは、幅広いステークホルーダのメンバーシップで構成され、そのメンバーの合意は今でも受け継がれている。このステークホルダーの参加により、国家の指導的役割と企業と異なるステークホルダー間の協力強化、輸出成長の追求、さらには国内市場のテストプラットフォームとして使用することを視野に入れて策定された。

都市化、気候変動、人口増加、高齢化などの世界的な課題から生じる機会に基づいてターゲットを設定。さらにフィンランドの強みとするIoT、Fintechなどのテクノロジーの専門知識と、小国家ならではのさまざまな分野との垣根を超えたコラボレーションを強化する潜在能力を基本としている。

そして2025年までには、以下を実行することでCEにおける世界的なリーダーになるとしている。

企業と輸出の成長を目指したCEの包括的な解決策を創造
国内市場の機能性を確保
迅速な行動と具体的な試行、CEへのメインストリーム化

 

2025年までの達成項目

フィンランドの競争力を強化し、新しい雇用と持続的な成長を創造。これにより、フィンランドの経済には少なくとも30億ユーロの付加価値が生まれ、「温暖化効果ガス排出と自然資源の消費の増加」と「幸福と経済成長」について切り離して考えることに貢献できる。

以下、経済、環境、社会分野の視点から具体的な達成項目をあげる。

経済分野:フィンランド経済の新たな基盤となる
・CEによって企業の競争力を向上。売り上げ高や新技術のイノベーションをもたらす
・輸出上の利点となり、国際化を望む企業の数を増加
・資金調達モデルの改革によりCEを支え、公的調達や共同組合などの援助を利用
・環境改善によって新たな成長とビジネスの創出

 

環境分野:資源枯渇に対する解決のモデル国として
・資源効率の大幅向上
・マテリアルサイクルをより効率的にし、再生可能な天然資源が再生不可能な資源に取って代わり、カーボン・ニュートラルで廃棄物のない社会へと移行
・CEはフィンランドの生態学的な持続可能性を向上
・CO2排出量や汚染負荷などの環境影響をより抑制

 

社会分野:適応者から先駆者へ
・社会的行動のための政策手段を決定する際に、CEが考慮されるようになる。公共部門においては、幅広い方法でCEに参加する。官庁、民間、第三セクター間の官民パートナーシップが重要な役割を果たす
・フィンランドに幸福をもたらし、サービスと共有経済(シェアリング・エコノミー)への移行を促進
・CEの認識は向上し、国内市場の需要回復と、CEの製品やサービスの注目が集まる
・消費者はサービスやリサイクルの共有など、新しい消費モデルを取り入れる

 

主要4分野にフォーカス

以上のことを踏まえてCEへ移行するためには、システムの変化が必要である。異なる組織や産業間において、新しい運用方法や考え方を変える必要がある。それには最も重要な分野に焦点を当てる必要があり、まずは4つの分野を選択。4分野に加えてそれらを体系的に変化させるための国際的な共同行動を、5つ目の分野として設定した。

1、持続可能な食料システム
より持続的で総体的なシステム開発に関与する。

2、森林を基本としたループ
森林産業は昔からフィンランドの主要産業。CEにおいても強みであることは変わらず、最善の専門分野と認識。

3、テクニカル(技術的)ループ
ここでは製品のライフサイクルの延長に焦点。フィンランドの強みであるIoTにより、ループ全体を長くして物質価値を最大化することで、製品のインテリジェンスが高まり、そこからサービスが生まれる可能性がある。

 

4、輸送交通と物流ループ
この分野は相乗効果が最も高い。物流能力の利用レベルの向上、化石燃料の再生可能または代替エネルギーへの転換、輸送ルートの最適化を図るためのソリューションなど。デジタル化では、旅客輸送におけるスマート輸送(Maas = Mobility as a Sercive、サービスとしてのモビリティ)へ移行し、より資源効率を高める。

 

5、国際的な共同行動
以上4分野を実行しそれぞれを達成するためには、政府、企業、大学、研究機関、消費者、市民などと体系的な変化が必要。それにはコミュニケーションと多様な相互作用が重要である。

 

ロードマップのアクション

以下3つの方法によって促進される。

・政策アクション:CEへ円滑に移行するためのコスト効率やその他の管理上の前提条件を合理化、調整、改善する方法などを立法上で実施

・主要プロジェクト:上記4分野のプロジェクトを実施

・パイロットプロジェクト:既存の技術革新とベストプラクティスを普及

 

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いかがでしたでしょうか。
所々に過去記事とリンクした内容がありますので、適宜ご参照ください。

日本と比べて人口およそ20分の一の国家の生き残りをかけたサーキュラーエコノミー・ロードマップ。長引く不況から打破するための「雇用政策」でもあり、気候変動などの「環境対策」でもあり、現在改革中の社会福祉制度に対する「社会政策」でもあり、そして今年独立から100年を迎えた小国家としてのこれからの「サバイバル政策」でもあります。

フィンランドの特徴ともいえる「国際競争力」「イノベーション」「国家の安定度」「透明性」などをどう活かしていくのか。

既存の研究分野でもあるバイオテクノロジー、工業デザイン、健康とセキュリティにおけるICT、ワイヤレス・テクノロジーなどあらゆる分野においてイノベーションが起こせる可能性を秘めている国、フィンランド。

過去ノキアのような栄光を再び見ることはできるのでしょうか。サーキュラーエコノミーのリーダーを目指して、まずは6月5日~7日にヘルシンキで開催される「世界サーキュラー・エコノミー・フォーラム2017」のホスト国としての存在をアピールすることでしょう。

このフォーラムの様子は後日お伝えする予定です。