フィンランドのベーシック・インカム制度導入に向けた試験的な調査について

 

 

昨日の朝から突如、世界各国の主要メディアやSNSのトレンドニュースにもあがった「フィンランドのベーシック・インカム(BI)制度の導入開始」。これは導入が決まったわけではなく、導入に向けた試験的な調査が開始された、だけのこと。導入が決まれば世界初とは言われているけど、あくまでも調査が開始されただけのこと。

これは世帯収入などに関係なく無条件で、全国民一人ひとりの個人単位で最低限所得保障として一律800ユーロ(およそ11万円)を無償で定期的に支給するという制度である。

しかし現行の社会福祉制度、例えば失業保険や育児給付金などの制度を全て廃止するという。

BIは長い歴史の中で色々と議論されてきており、欧州圏内では既にオランダのユトレヒト市でも同じく実験調査が行われているようで、もしかするとこちらの導入予定が加速されるかもしれないと言われている。

今フィンランドは長引く不況のためになんとかしてこの状況を打破しようともがいている。4月に発足した新内閣もこれに対する政策の結果が全く出ず、今年一年間の失業率はずっと10%弱のままだ(2月には10%超え)。

そんな中、このBIの導入について世論調査を行ったところ、フィンランド国民の約70%がこの制度の導入について賛成しているという。

このBI。無条件で且つ無償で支給されるという点に注目すると、働く意欲が削ぐわれると意見もあるのだが、導入する意味として捉えられているのは「働くことから切り離して所得を一律に保障する『生存権』に根拠づけられた所得保障を実現しようとすること」。

つまり今までは働く意欲があるかないかという基準で評価されてきた社会だが、この制度を導入することで、「人間であれば誰でも『生きる』権利を平等に持っているという普遍性」を基準にしているため、今までだったら「生活のために労働をし所得を得て」いたところ「自己実現」や「稼ぎにならない労働や活動、つまりボランティア的な労働」も可能とし、人間としての豊かさが高まるという見方がある。

生きている人間全員に無条件で無償の最低限の生活保障を給付する。これはこれからの働き方はもちろんのこと、一人ひとりの生き方までを変える「社会のパラダイムシフト」そのものになるだろう(「経済成長至上主義からの脱却、脱成長経済への転換」とも言われる)。

 

一方で、「福祉国家」と言われてきたフィンランド共和国だが、この制度を導入することによってそもそもの「社会福祉」のあり方が問われてくる可能性もあるだろう。

今まで細かく社会福祉制度が整備されてきたが、このBIを導入することにより高額医療や障がい福祉などもここに集約されることになるのだろう(現段階では詳細は未定)。そうなると弱者救済の基本が失われるという考えだ。

また、財源確保についての批判がある。フィンランドの場合は、約7兆円の総予算が必要とのことだが、現在24%の消費税のところ全社会福祉制度を廃止してBIへ集約すると持続可能な制度となるのだろうか。

 

ちなみに現首相のシピラ氏は中央党の党首であり、かつビジネス界出身の金持ちというステータスに注目しておくべきだろう。左派でも右派でもないのだが、やはり社会福祉の基本である弱者救済の視点についてはやや欠けているという意見もある。

また以前から、失業者の失業期限の上限を現行500日から250日へ削減する方針や、EU圏外からの留学生の教育費を現行無料のところいくらか請求する新たな方針などを掲げ、特に若い層からの不支持率が高まっていることにも注目したい(フィンランドの若者層の政治に対する意識はもの凄く高い)。

世論調査では賛成意見が多いが、さて試験的導入を開始し、どんな結果が出てくるのか。そして本当にこのBIが導入されるのか。

 

世界中から「ユートピア」と言われて久しいフィンランド共和国。移住者の筆者にとっても今後の動向から目が離せない。

 

BIの今後の予定:

2016年の春頃、他国の調査なども含めて試験的な調査結果を収集。

2016年下半期ごろ、試験モデルや研究結果の分析について発表。

2017年、ベーシック・インカム導入の予定。

 

 

このBIについてタイムリーかつ正確に情報を収集したい方へ。

一番精度が高いのは、恐らくフィンランドの社会保険庁(通称:KELA)のニュースと思われる。ここには英語サイトもあり、恐らく今回の世界各国の反響を見て、KELAは英語サイトもタイムリーに公表してくると思われるので、ご興味のある方はこちらのサイトをチェックするのをお勧めする。

また同時にフィンランドの国営放送 “YLE”の英語サイトもタイムリーに報道されているので、政治と絡めて読む方にはお勧め。

そしてBIのやや専門的なサイトだが、“BIEN(Basic Income Earth Network)”という世界各国の情報が得られる。

これら全てSNSでも閲覧可能となっている。

 

 

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