ブックイヤーに見るフィンランドの読書文化

 

今年のフィンランドはブックイヤーだ。

以前からフィンランド国民の読書量が世界1位や2位などと聞くが、その理由がよく分かる(厳密にいうと読書といっても「本」だけに限らず「新聞」「雑誌」「広告」なども含まれるようだ)。

図書館の充実度が高いことや本に関するイベントが多く、日常的に「読書」というものが自然に根付いている。

それに何と言ってもこのキャンペーンにフィンランド大統領が「国家プロジェクト」として後援している。

Niinistö(ニースト)大統領はこんなことを国民に向けて発言している。

「読書とは、われわれフィンランド文化の軸となるものだ。多くの子どもや青少年たちは沢山の本を読んでいると思うが、まだ読書慣れしていない子どもにはもっと多くの読書時間を裂く必要があると思う。そこで国民の全ての子どもたちに本を読ませて(読んであげて)、彼ら自身の人生を豊かにする。読書を行うことは、物事を「考え」「想像し」「心で感じ取る」こと。それに読書は「楽しい」ものである」

特別なことは言っていない。日本でも聞き慣れたことだ。

これを一国の大統領が国民に向けて発信していることが、やはり国民一人ひとりの人的資源を重視している小国家のサバイバル術であると、外国人の私はそう思うのである。日本の首相や都道府県知事などの立場の人がこのようなことを国民に発した場面を一度も見たことないから、なおさらそう思うのである。

ちなみにこのNiinistö大統領の妻であるMrs. Jenni Haukioは詩人であり、過去に国際ブックフェアーのプログラム監督を担当するなど文学分野に精通している。

 

 

フィンランド語は、もともと世界の中でもマイナー言語として存在しているようで、当然のことだがフィンランド語の本の出版市場が他の欧州市場と較べて小さいということを耳にしたことがある。そのような理由でこうしたブックイヤーなどというキャンペーンを掲げる部分も一つにはあると思う。

しかし恐らくフィンランド人の心のふるさととも言われている“Kalevala”(「カレヴァラ」)を基に、自分たちの言語や文化、歴史に対する誇りが強くあるが故に、読書という行いが根強いのではないかと想像する。ちなみにこのKalevala、フィンランド人にとっても非常に読みでがある本なので、読破したというフィンランド人は残念ながら私の周りにはいない(子ども向けの絵本など簡単に読めるものはある。また単に興味がないという人もいるが)。

 

子どもの頃から夜寝る前には必ず本を読んでから寝る、どこかへ出かけるときには必ず1冊本を持っていく、などと言われて育った家庭が多い(もちろん全国民、全家庭ではない)。

私の知人の娘が我が家に泊まりに来たときに何を読んでいるのかを聞いてみた。返ってきた答えは、“Aku Ankka”(アクアンッカ)。ドナルドダックのマンガなのだ。これは青少年に限らず大人でも楽しめるマンガでフィンランド国民に人気の本だ。

そして子どもたちに本を身近に楽しんでもらおうと、各地の図書館でも様々なイベントが目白押し。地域によってその内容は異なるが、我が家の地域では映画上映会から読み聞かせ会、朗読会などさほど日本とは変わらないイベントが連日行われている。

最近では、eBooksや日本の某番組で紹介されていたように楽器の貸し出しなどを行う図書館もある(これも全国の図書館ではない)。図書館に隣接したカフェで借りた本を読んだり、目の前の広場で友人たちとおしゃべりしながら本について語り合ったりと、どこの国でも変わらない図書館の風景がある。

また車による移動式図書館も充実していて、都心部から郊外、田舎、国境付近のフィンランド全国津々浦々までに本を届ける仕組みができている。

 

仕事をしている大人は、夕方4時になれば仕事が終わるので、就寝までの時間を充分に読書へ充てることができる。

フィンランド人にとって一年で最も大切なクリスマスには、クリスマスプレゼントとして本を贈る人も多い。

 

夏は朝4時から夜11時までサンサンと降り注ぐ太陽の下でサングラスをかけて日光浴がてらの読書。夏休みには湖のほとりのサマーコテージで心ゆくまで読書。

冬は一日中降りつづく雪を見ながらロウソクを焚き暖炉を目の前にしての読書。語学学校のある先生は、1週間ある休みの間、ほぼ毎日朝から晩までソファーに座って読書三昧だとか。

 

というわけで、こうした本を取り巻く環境が充実しているから「本好き」な国民が多くいるのだろうと感じる。

 

 

しかし日本と同様に若者の本離れがここでも言われているようだ(紙の本離れらしいが)。フィンランドの学生、それも小学生ぐらいからスマホを持っているので(実際、前述の娘は12歳の誕生日プレゼントにスマホをもらっている)、彼らはそちらへの興味が高いようだ。

そういう現状であるからかどうかは分からないが、このキャンペーンでもSNSを使った情報発信がかなり活発だ。ハッシュタグでどんな人々がどんな本を紹介しつぶやいているのかを見るだけでも面白い。

 

ホームページでは月ごとに各地での催し物を紹介しているので、もし年内にフィンランドへ渡航される本好きの方は一度このキャンペーンを見てみるのも良いかもしれない。ただし、公式言語のフィンランド語とスウェーデン語の案内となるが。

 



 



 

 

 

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