GRI G4改訂版発行を目前に控えて

今年も残すところあと1ヶ月。

CSR(Corporate Social Responsibility = 企業の社会的責任)やサステナビリティに取り組む人々にとって、今年は注目すべき出来事がいくつかありました。

その中の一つ、GRI(Global Reporting Initiative = 持続可能性報告書のガイドライン)の第4版が改訂作業に入り、各国の言語に翻訳され順次(日本語版は来年早々)に発行されるという動きに関連することを今回は書きたいと思います。

今回のこのガイドライン改訂の主な目的は、

・より詳細で分かりやすく、初心者や経験者にとってユーザーフレンドリー

・「マテリアリティ」(組織の重み付け)に焦点をあて、そのプロセスを報告

・アプリケーションレベルを廃止し、「準拠」(in accordance with)を導入

・開示事項の拡充(特にガバナンスとサプライチェーンの項目)

・OECDやUNなどの国際的なフレームワークとの整合性

などに焦点が当てられています。

このGRIの本部があるオランダのアムステルダムを中心として、ヨーロッパ各国では改訂版「お披露目会」、題して”GRI G4 Local Launch”が今秋開催されています。ここフィンランドのヘルシンキでも先日このイベントが開催されたので、参加してきました。

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このお披露目会はGRIのスタッフから改訂のポイントが説明され、この機会を通じて参加者同士のネットワークを広げることが目的でした。

改訂内容のプレゼンテーションでは上記の改訂目的が説明され、特に「マテリアリティ」については、組織が組織活動において重み付け(ステークホルダーの関心事項を含めた)を行うことにより、持続可能性における影響や課題に注視し、ステークホルダーに対して重要な情報を提供することを促進する。

その結果、持続可能で戦略的、且つ信頼性のある企業活動を目指すことが期待される、ということを強調していました。

また報告書の透明性をより高めるために、外部保証を受けることを推奨していました。ただし、これはガイドラインの要求事項としているものではなく、今まで以上のより効果的な保証を期待するものが望ましいと話していました。

そしてこのG4への移行期間は、2014年と2015年の2年間とし、2015年12月31日までに完全移行するとしています。

プレゼンテーションの最後には会場からの質疑応答があり、サプライチェーンのマネジメント方法やガイドライン内で使われている言葉の解釈について(例えば”Aspect”と”Topics”の翻訳および解釈の仕方)などの質問が寄せられていました。

因みに会場の約9割がフィンランドの企業や認証機関などからの参加者でしたので、言葉の解釈については英語からフィンランド語へ翻訳する際の問題点として質問していたようです。

このプレゼンテーションに続いて、パネルディスカッションがありました。参加者はノルウェーのEthical Trading Initiative社、Norsk Hydro社そしてフィンランドのNordea社の3社から。

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各社のサステナビリティ活動の紹介を中心に、このG4に準拠した場合にどんな点が問題点として挙げられるか、などが話し合われました。

特に印象的だったのが、Norsk Hydro社の幹部メンバーが組織の重み付けをすること。現在も実施しているということなので、G4に準拠しても引き続き彼らが重み付けを行い、そのプロセスを開示するという。

またNordea社は、昨今の経営不振に対してステークホルダーへの説明責任の難しさやステークホルダーとの継続的な対話の方法を模索しているようで、G4に準拠したらこの辺りをさらにどのように進め報告書上で開示していくか、という点を問題点に挙げていました。

因にこのNordea社の担当者は、以前コミュニケーションネットワーク関連の仕事に従事し、如何にコミュニケーションの重要性を理解していても、実施することの難しさは常に”Challenging”だと話していました。

プレゼンテーションの最後の質疑応答にも出て来たサプライチェーンマネジメントに関する議論について、ここ北欧においても個人的にはかなり悪戦している印象を受けました。日本よりも歴史的に発展途上国(特にアフリカ)との関わりが深くても(逆に深いからこそ)、毎年新たな問題が次から次へと出て来てどのようにマネジメントを実施していくか。

今回のG4には”Grievance Mechanisms” = 苦情処理の申し立ての仕組み・制度というものが新たに加わったので、これに準拠しながら結論的にはやはりステークホルダーとの継続的な対話を行うことが何よりも重要だと3社の担当者は口を揃えて話していました。

G4と統合報告フレームワーク(IIRC)との連携については、会場からは認証監査機関の担当者からどのように連携していくか今後の課題である、といったコメントが寄せられただけであり、一般企業の担当者などにとっては特段注視するポイントでもないようでした。

実際に、数社の一般企業の担当者、それにコンサルタント会社にこの連携について質問したところ、統合レポートを発行する予定は今のところない。G4をまず確実に準拠しながらIIRCの動きを見ていく、というのが大方の回答でした。コンサルタント会社の担当者からも、統合レポートの発行を考えている北欧企業は少なく、恐らくここ1−2年はフレームワークの内容をみながら、実際にどうレポートしていくかの検討に入るのでは、ということでした。

日本の状況が詳しく分からないので何とも言えませんが、個人的に聞くところに拠ると、日本の企業の間では「統合レポート=サステナビリティ報告書(非財務報告書)+アニュアルレポート(財務報告書)」という考え方があるようです。これは北欧(欧州)とのギャップを感じつつ少し危機感すら覚えます。数年後に両国のレポートを並べた時にこれが明確な違いとなって表れていないと良いのですが。。

ここまでのプログラムで約2時間(プレゼンとパネルディスカッション、それぞれ1時間ずつ)。個人的には少し時間が少なかった印象があります。プレゼンテーションも然ることながら、パネルディスカッションもかなり良い議題が上がっていたのにも関わらず、少々消化不良で終わった気がします。会場からの質疑応答も1、2問しか受けられず、恐らくこの辺りはランチタイムや休憩時間の間にそれぞれ個々にネットワーキングするという意味だったのかもしれませんが。

最後に余談ですが、そのネットワーキングに欠かせない?会場での軽食とランチは今回無料で提供されていました。このあたりが日本のセミナーとは少し雰囲気が違って、私のようにネットワーキング慣れしておらず、且つ完全アウェーの地でネットワークを広げるのに非常に有り難く、この軽食のお陰で数人の方と色々な話しができました(プレゼンとパネルディスカッションが消化不良だったので、積極的にネットワーキングしないと、という士気があったためかどうかわかりませんが)。

対話(会話)のきっかけづくりに食べ物を提供する。そこに人が集まり対話(会話)が始まる。この点は、古今東西みな同じような気がします。ぜひ日本のセミナーもこうしたカジュアルで気軽に参加者同士が交流できるセミナー内の雰囲気づくり(別途懇親会などではなく)を作って欲しいと思います。

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